エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−

この記事はイスラエルより発信されている「NONVIOLENCE (非暴力)」のホームページより、製作者 ラエド・アブサリア神父様の許可を得て「聖地のこどもを支える会」で翻訳したものです。


オリーブ・ブランチ NO.183

ベツレヘムのよろこびのないクリスマス
                マット・スペタルニック(ロイター)

ベツレヘム西岸地区

 催涙弾ガスの臭いがベツレヘムの飼い葉桶広場の旧い敷石の上に立ち込める。イスラエル軍のパトロールがゴトゴトと通りすぎた後もだ。この聖書の街のパレスチナ系の住民にとって、それは今年のクリスマスの準備にのしかかる憂鬱な気分のあからさまな現れだ。イスラエル軍は彼らの生命をしっかと握っている。多くの住民は、ここ2年間のクリスマス休暇よりも今年が一層ひどいとは思っていなかった。この2年間、軍事的な封鎖とイスラエルとパレスチナ間の抗争がイエス生誕の地とされ敬われてきたこのベツレヘムへの観光客や巡礼の流入をせき止めたからだ。しかし今や、エルサレムのバスに乗っていた11人のイスラエル人を自爆テロが襲ったあとで、パレスチナ統治下のベツレヘムをイスラエル軍が再度占領し、戒厳令を敷き、18日経った現在住民は慶びのないクリスマスを迎えようとしている。
ベツレヘム市長のハンナ・ナセルはエルサレムの南にあるこの街で「この街はキリスト生誕の地です。しかし全てが今死んでいる‥‥私達は集団で懲らしめを受けているのです」といった。
この憂鬱な気分を助長するのが、パレスチナのアラファト大統領を閉じ込め、国際的な嘆願にも関わらず恒例のクリスマス・イブのベツレヘムへの巡礼を、昨年通りに果させないようにするというイスラエルの脅迫である。
教会への道のりは軍隊のパトロールを避ける。
教会に辿りつくのに困難なのはアラファト大統領だけではない。ここ数週間キリスト生誕の教会へ向うのに信徒はイスラエル軍を避けなくてはならない。しかも多くの信徒が押し返された。「祈りに来るのに命がけでなくてはならないのは本当に残念だ。」と、ベツレヘム地域のカトリック教会の長であるアムヤド・サバラ神父は言った。日曜のミサへと礼拝に向かう信徒が細々と集まると、イスラエルの兵士は近くの道路に扇上に広がり、ドアを叩き、住民がバルコニーから凝視する中、家から家へと捜索する。石畳の広場の中に、突如として軍用車が音を立てて現れる。ハッチから出てきた兵士が、石を集めているパレスチナの若者のいる広場の隅に催涙弾ガスを高角発射した。
それから車は大きな音を立てて、2000年の9月のパレスチナ独立の蜂起以来シャッターの下りた街のみやげ物屋(ほとんど空だが)、のシャッターに金属的な音をこだまさせて去っていった。
イスラエル軍の兵士達はこの4世紀に建てられた教会を注意深く監視している。手配中のパレスチナ過激派がそこに隠れ潜み、4月の一ヶ月にわたる包囲のきっかけとなった状況を再現させないためだ。
この教会には、イスラエル軍と内部に閉じ込められたパレスチナ過激派との毎晩繰り返された銃撃戦の傷跡がある。

回復の見込みなし
 昨年の再度の軍事的な侵攻、イスラエル軍に言わせれば武装勢力の探索のためであるが、これが何度も起こり、西岸の街には回復の兆しはほとんどない。ベツレヘム、3年前のキリスト生誕2000年には教皇を迎えパレスチナの観光の極致であったこの街は、経済的な崩壊を迎えている。みやげ物屋は廃業、客がいないためにホテルは閉店、街の道を行き来した大型のバスも姿を消してしまった。
飼い葉桶通りにはいまだに祝2000年と書かれた電球が連なっている。これは新しい1000年を祝うためであったが、電気は故障している。6階だての生誕ホテル、この宿屋には空室はたくさんあるのだが、空室があまりに多すぎるために、空っぽのロビーに足音がこだまする。
「ここではあまりさびしくて死にたくなる」と40歳のアワティフ・カラフ・マサルヴェは言った。昔は彼の監督の下、24人の従業員が働いていたが、今やかれはたった一人の留守番であり、従業員だ。
ほとんどないに等しいクリスマスの飾りつけは、ベツレヘム中の店のウインドーに貼り付けられた、蜂起の際の死者と武力のポスターに押しやられている。ベツレヘム当局者はイスラエル軍による軍事的な規制のために,クリスマスのお祝い事の多くが取りやめとなり、今年のお祝いは宗教的な儀式のみだと言った。
このことは多くの住民に苦渋を強いたが、中にはイスラエル軍が締め付けを緩めるとか、この2週間,善意のしるしとしてベツレヘムから兵士を引き上げるかもしれないという望みを口にする者もいる。こうした計画については、イスラエル軍は、イスラエルの中での攻撃を防ぐために行動していると言明し、口を堅く閉ざしている。
「私達はベツレヘムに駐留したくない」と、イスラエルのスポークスマンは述べた。「ここにいるのは、テロリストはクリスマスや他の祝日にも休まないからだ」と。



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