エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−

この記事はイスラエルより発信されている「NONVIOLENCE (非暴力)」のホームページより、製作者 ラエド・アブサリア神父様の許可を得て「聖地のこどもを支える会」で翻訳したものです。


オリーブ・ブランチ NO.172

『パレスチナの民衆運動:教育のための主張』
トワーヌ・ファン・ティーフェレン

 アラファト議長府の包囲が続いている中、この数週間パレスチナで画期的な行動が起こっています。これは何十年か前に東ヨーロッパや南アフリカで起こった独裁政権に反対する民衆運動を思い起こさせるものです。ラマラでの耳をつんざくばかりの鍋やフライパンを叩く音、ナブラス近郊の野原での農民の集団による印象的な黙祷、数多くの都市で子どもたちを学校に連れて行くために集団で外出禁止令を破った親や教師たちについて報じられています。何ヶ月も前からこれらの地域では、外出禁止令に従わないことが計画され討議されていましたが、パレスチナの人々はいよいよ行動を起こして新たな民衆抵抗運動に参加する段階に達したのです。この態度の変化は、二つの要因が考えられます。それは、占領の性格の変化と一般的な政治環境の変化です。

占領の性格
 30年間にわたる西岸地区とガザ地区の占領は、パレスチナの人々にとって、
好意的で受け容れられるものであったことは一度もありません。それぞれの時代において、日常生活に様々な程度の制限が加えられてきました。長い間占領は、高度に発達した統治のための制度でした。人民の服従を強制するために、様々な手段が用いられました。利用されたのは武力だけではありません。それに加えて無数のものに依存していました。それはイスラエル領内でのパレスチナ人の労働、複雑な許可制度、地域の首長やその他の代理人との良好な関係、他のものには与えられていない援助の供与、手の込んだ何万人もの協力者のネットワークなどがあります。

 目下占領は全般的に、住民全体に対する純然たるあからさまで理不尽な武
力の行使に頼っています。自爆攻撃に対する報復としてイスラエル軍は、最も露骨に、既に耐えがたいものとなっている日常生活への締め付けを拡大しています。
検問所や、その他のイスラエルとパレスチナの接点において、パレスチナ市民は古典的な植民地的方法で絶えず屈辱を受けています。この2年の長きにわたって、大多数の住民が個人や家庭の問題において、例えば財産や土地において、自分や自分の子どもの教育において、そして自分の仕事においても修復できない被害を受けています。

 しかしながら、純粋な武力が行使されればされるほど、軍隊の抑止力と適応
能力はよりたやすく限界に達するようになります。過去2週間の間にパレスチナ
の人々の恐怖に対する閾値は著しく低くなりました。私の個人的な印象では、外出禁止令は最近ではいつまでたっても終わりが無く、全く理不尽で人間性を奪うものになってきたと住民は感じており(市民は残酷な実験に使われているねずみのように扱われています)、外出禁止令はもはや現実として受け容れられなくなっています。

バックアップ 子供達を殺すな

政治的環境
 政治的環境も変化しています。市民への脅威が明瞭に存在しています。「通
常の」土地の没収と入植地の建設のプロセスが衰えることなく続いています。しかもそれに加えて「移送」のシナリオが盛んに議論されています。これには国内の移送や、国外への移送等のいくつかの「変種」があります。そのため、この議論はいつの間にかイスラエルや米国の保守主義者の間では、正当な公の議論の一部となってしまっています。対イラク戦争に続いて中東の政治地図を塗り変えようとする意志が、人口分布図も塗り変えることに対する許容を生み出す可能性があります。パレスチナの多くの人々は、対イラク戦争の間とその後の民族浄化の可能性を現実のものとしてとらえています。

 そのような脅威に直面してパレスチナの人々は、自分たちのリーダーが事態の方向を転換する力を持っていないと感じています。パレスチナ自治政府とアラファトはパレスチナ人の代表と見なされていますが、彼等は国際政治の舞台で追いつめられており、国内政治では精査の下に置かれています。明確な合意への現実的な政治的道筋がありません。このようの状況の下、多くのパレスチナ人は自分たちが政治的行動に参加する差し迫った必要を感じています。民衆運動を創り出すことで、国内および国際的な状況に変化をもたらすことができるかもしれません。インティファーダ2周年を記念して、パレスチナの新聞は、インティファーダの大衆的根源に立ち返ることの必要性についての記事であふれています。

戦略
 民衆による非暴力の運動には、調整と戦略が必要です。現時点においては、
ほとんどそのような戦略に欠けています。民衆による行動は局所的にまた多くの場合は自発的に組織されており、広く報道されることはごく稀にしかありません。

 そのようの戦略の一つとして、幅広い社会的分野で世界の人々に対し継続して統一した行動をとることが考えられます。このような分野には医療、経済、教育その他が考えられます。大衆行動のための社会的分野を選択することの利点は、このような分野は、占領が何をもたらすか人間的な視点での描写を可能にするということです。幅広い世界の人々に対して、このメッセージは一般的な政治的声明より、より大きな影響を持つでしょう。教育の分野を例にとってみましょう(私自身この分野で活動しており、その可能性について良く理解しています)。
来週10月2日水曜に関係当局や宗教指導者ならびにNGOが、ベツレヘムの聖
誕教会前で示威行動を行うことを発表しました。そこで、子ども、親、教師が教育の権利を要求します。異教派間の祈りと演説の他に、「子どもたちに自由を」と記した横断幕をヘリウムの風船に付けて空に浮かべます。外出禁止令下にある他のパレスチナ都市の教育と、連帯が宣言されます。ベツレヘムの人々は、他の都市の人々と異なり「恵まれていて」、自分の家からは外出できるものの、生徒や教師も通学の際に例えば検問所や入植者の道路を横断できないのです。

 ラマラ、ナブラスおよびその他の都市では最近人々が、ある種の地下教育の
運動を始めています。学校に行けない場合のために、人々は外出禁止令そむいて、自分の家や時間、専門知識を出し合って、家庭において代替教育を創り出しました。彼らを駆り立てているのは教育に対する差し迫った必要だけでなく、歴史に対する知識でもあるのです。教師たちは、学校のコミュニティーは次のことをしっかりと認識していると言います。それは第一次インティファーダの時のように、何年もの間教育を失ってはならないということです。当時も地下教育の存在については良く知られていましたが、体系的に実施されることはありませんでした。教育の中断は若者たちに大きな影響を及ぼし、教育において重大なハンディキャップを背負うこととなりました。私のいるベツレヘムでは、学校が親からの要請で、外出禁止令に備えた緊急プランを立てて、子供たちができるだけ家庭で学習を続けることができるよう、教師と親が連絡を取り合う詳細な段取りを決めています。

 パレスチナの人々は、大きな困難にもかかわらず到達できた教育水準について、いつも誇りを持ってきました。外部からの訪問者は、幼い生徒や年長の生徒(それに教師や教育責任者)が、ひたすら教育の権利を実現するために見せた粘り強さと臨機応変さに驚きます。多くの子どもたちと教師は、いくつもの丘を超えまた検問所で長時間の足止めにあい、学校につく頃には疲れ切ってしまっています。多くの都市や地域間で、民衆による継続した公教育運動を調整すること(例えば、音を立てたり徹夜集会などの活動を同時に行ったりすること)は大きな可能性を持っています。人々は現在やる気になっています。地方や地域で、教師や親、教育省の代表からなる委員会を組織することも考えられます。直接会って打ち合わせすることができなければ、電子メールでもかまわないでしょう。このような委員会は、地区の公的活動を組織し、計画し、報告することが出来るでしょう。結局のところ、教育は全ての人々が直接または間接の利害を持つ分野であり、大量動員が可能なのです。

 パレスチナの若者はパレスチナ社会では多数派ですが、公のスポークスマン
になるということはめったにありません。しかし、教育を受ける権利を守るための継続した活動は、外国語の得意なパレスチナの若者に活動の場を与えるでしょう。これらの若者は文章を書いたり演説に参加したりすることができるでしょう。声をあげるための創造的な方法は、パレスチナの大衆抗議運動の歴史について学んだり、話し合ったりする課外活動の一環となることでしょう。生徒は、現在ベツレヘムでの活動で依頼されているように、プラカードや横断幕の文句を考えることができるでしょう。著名人に国際的な委員会を組織してもらって、このキャンペーンを支持してもらうことができるかもしれません。こうして、具体的な人間としての要求を掲げた広範な運動は、占領の残虐性を白日の下に曝すことができます。そして国際社会を動かし、パレスチナの人々が中東での新たな戦争で使い捨ての人質とならないような役割を果たすことを願っています。

トワーヌ・ファン・ティーフェレン(ベツレヘム在住)はパレスチナでの教育において様々な課外プロジェクトに取り組んでおり、オランダの監視運動、平和市民連合に参加しています。また、アラブ教育研究所(AEI)の理事を務めています。AEIはパックス・クリスティ・インターナショナルとEuro-ArabDialogue from Below とPYALARA(アル・ラムのリーダーシップと権利行使のためのパレスチナ青年協会)のメンバーです。


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