エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−

この記事はイスラエルより発信されている「NONVIOLENCE (非暴力)」のホームページより、製作者 ラエド・アブサリア神父様の許可を得て「聖地のこどもを支える会」で翻訳したものです。


オリーブ・ブランチ NO.171

アラブ教育機関からの声明

2002年9月17日ベツレヘム発

親愛なる友人の皆さん、
 皆さんに緊急を要する問題についてお伝えしたいと思います。パレスチナの人々は、米国が主導するイラクへの攻撃を非難し、阻止されるよう祈っています。イラクへの攻撃は単にイラクの国土を戦火に巻込むにとどまらず、パレスチナの西岸地区およびガザ地区の状況にも壊滅的な結果をもたらすおそれがあるからです。イスラエル国内の議論に注目すると、イラク攻撃に続いて取り得る軍事的選択肢について専門家たちが語るのを聞き驚かされます。そこで公に論じられているシナリオの多くには、パレスチナ人を西岸地区から「移送」することが含まれています。パレスチナ人は、意のままに追放することができる非存在とみなされているかのようです。イスラエル国内の世論調査でも、ここしばらくの間、国内のユダヤ人の50%は民族浄化政策にも等しい考えに賛成しているという結果が出ています。イスラエル国内では、この考えを推進するポスターさえ大規模に出回っています。平和の文化に捧げられるはずのこの21世紀において、集団追放は公的なスローガンや検討の対象としてふさわしい選択肢ではないということを、イスラエルの政治指導者と市民社会に対して、はっきりとわからせねばなりません。

 パレスチナ人が非存在として取り扱われているということは、さらに次の二つの問題についても当てはまります。はじめの問題は教育についての状況です。パレスチナ人の家庭が現在直面している大きな問題は、イスラエルの占領にともなう道路の閉鎖、外出禁止令および道路封鎖により、学校への通学が困難な状況が続いているということです。多くの人々が、道路封鎖の結果もたらされた貧困の犠牲となっています。多くの地域で食料と医療が不足しており、また多くの家族が学用品や制服など、子供を学校に通わせるために必要な物を用意することができません。通学路における基本的な安全を生徒に提供することや、健康的で適切な学校環境を再建することは、学校やパレスチナ教育省にとって非常に困難な仕事です。これには、学校の建物や施設に最近加えられた損害を修復し、新しい学級を作り、すべての子供を就学させ、二交替制を減らすことができるような方策をとることなどが必要となります。

 教育の分野での政策決定は困難であるばかりでなく、往々にして不可能でさえあります。現在、教育当局者間の物理的接触が不可能になっています。それは、 教育省の本部のあるラマラが依然封鎖されており、到達不可能だからです。 多くのパレスチナの都市は昨今厳しい外出禁止令の下に置かれています。教育省によれば、ベツレヘム地区ではベツレヘムの市街と村々との間の移動が困難なために、30人もの教職員を職場に派遣することができていません。私たちアラブ教育協会は、皆さんの国でこの問題への注意を喚起し、周知を図っていただくことを繰り返しお願いいたします。広範な精神的および教育上の損害が、将来のパレスチナを担う子供たちに加えられています。

 さらにもう一つの問題は、イスラエル政府(治安担当閣議)がエルサレムとラマラの間の空港地域とベツレヘムのラケルの墓地域を併合する計画を発表したことです。右派のエフド・オルメルト現エルサレム市長の心からの願望である、エルサレム首都圏の建設に本気で取り組もうとしているようです。エルサレムの境界線は広い範囲にわたって拡大され、ベツレヘム市街中心部にまで食い込むこととなります。 ラケルの墓(ちなみに、ここはキリスト教徒やイスラム教徒ばかりでなく、ユダヤ教徒にとっても聖地とされています)が併合されるのにとどまらず、ビラル・ビン・ラバ・モスクとその西側の墓地周辺地域およびその東側のカリタス病院に至る広大な地域も併合されようとしています。これらの地域は、治安上の理由という名目ならびにイスラエル人だけが利用できる、ラルケの墓への新たな道路の建設のために没収されるのです。当局の署名一つで、ベツレヘム市街の中心部に住む少なくとも3000人のパレスチナ人が、エルサレムの管轄下におかれることになります(これらの人々が引き続きそこに留まることができるかどうかは、今後の成り行きを見守らねばなりません――エルサレム市当局は、パレスチナ人を自らの管理下に引き入れることについて消極的であることは周知の事実だからです)。

 エルサレムへの立ち入りが禁止されないとしても、西岸地区南部のパレスチナ人は、ベツレヘムの市内を大きく迂回しなければエルサレムへ行くことが出来なくなるでしょう。ベツレヘム−エルサレム間の検問所は現在の検問所より数百メートル南に設けられることになります。繰り返しになりますが、これはベツレヘム市街中心部の中にあたります。新たなバイパス道路と検問所の網の目により、観光客がベツレヘムを訪れることは一層困難になることは明らかです。それゆえこの計画は、ベツレヘムが観光と経済の中心として存立することを一層困難にし、この都市の自然の成長を阻害し、若者や老人にとって生活環境を困難なものにすることで、国外への移住を促進するという政策の一環と考えられます。
このエルサレム首都圏構想が遂行され、実現するならば、ベツレヘムの地域社会の未来の存立に、致命的な打撃を与えるであろうと言っても誇張ではありません。

 この問題を真剣に受け止めていただけるよう繰り返しお願いいたします。イスラエルの新聞「ハ・アレツ」が社説で述べているように、これは土地の収奪であり、自爆攻撃の沈静化を受けて開始されようとしていたあらゆる和平構想と、パレスチナ立法評議会によるパレスチナ自治政府の機構改革実施への決意に、平手打ちを食らわせるもの以外の何ものでもありません。私たちは特に、ユダヤ教指導者の間にあるこの構想に対して海外から抗議するための行動を起こしていただくことを希望しています。これらのユダヤ教指導者たちは、ラケルの墓地域をイスラエルの掌握下に置くようにという執拗な圧力が、長年にわたってイスラエルの政治指導者にかけられてきたことについて少なからず責任があります。

 最後に、わたしたちは平和を愛する世界のすべての友人に訴えます。これらの深刻な事態に対して反対の声を上げてください。そして、この地域の平和を守り、地上での更なる状況の悪化を防ぎ、イスラエルによる占領を終わらせることができるよう助けてください。

 Arab Educational Institute
AEI はパレスチナのベツレヘム−ヘブロン地域で活動する地域教育機関です。AEI はパックス・クリスティ・インターナショナルとオランダ・インターチャーチ平和協議会(IKV) のEuro-Arab Dialogue from Belowのメンバーです。


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