「まったく、悟浄は甘えん坊さんですね・・・」
そう言いながら、甘えたかったのは自分の方なのではないかと、僕は胸がじんわりと熱くなるのを感じていた。
それからどうしたかと言うと、衝動的に悟浄を抱きしめてしまった場所がペットショップの店内であったことに気がついて、慌てて取り繕った僕を悟浄は可笑しそうに笑って。
「八戒ってほんと大好きだよ、俺。八戒は、俺のこと好き?」
と恥ずかし気もなく告白された。それがどう言う好きなのか、その時は深く考えもせずに、僕は正直に答えを返すと、悟浄は幸せそうに頷いて、
「大好きついでに、ちょと後ろ振り返ってみて」
僕の後ろを指差した。
「何です?」
その指の先、先程悟浄を担当していたエンジニアが、猫型と思しき個体の手を引いて、メンテナンス室の奥へ姿を消す瞬間が見えた。深めに被ったフードに隠されて、その表情を確認することは出来なかったのだけれど、その猫型は、真綿のような白い獣毛の耳をピンと起てた、悟浄と年格好の似た少年型のペットのように見えた。
「あの子がどうかしたんですか」
「あいつ、俺と同じ「IR型」のペットなんだ・・・俺と同じ時期にここに来たんだけど、色々問題ありでまだ引き取り手がみつからないらしくてさ」
「お友達、なんですか?」
「あいつは、俺のこと友達だなんて思ってないだろうけど、俺、あいつのこと嫌いじゃないんだよ。・・・で、俺さ、八戒にすご〜く我が儘なお願いしちゃうかもしれないんだけど、その時は笑ってOKして欲しいんだよね」
脈絡もなく、悟浄は言う。
「あの子と何か関係のあることなんですか?」
「・・・俺が甘えん坊さんだってことで・・・」
答えになってはいなかったけれど、僕は静かに頷いて、しっかりと悟浄の手を握り直していたのだった。
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