コンロにかけられていた銅製のアラジンポットが、その細い口先から盛んに白い湯気を吐き出している。
ゆるやかな動きで、オーナーはポットを手に取った。
「八戒くん、サブマスターの資格持ってるじゃない」
「えっ?」
「履歴書に書いてあったでしょ。確か、あれがあれば代理同伴が可能なんだよねぇ。まさかあれ、履歴詐称じゃないでしょ?」
「・・・でも、あれは、」
確かに僕は人型の第二次所有者としての資格を持っている。サブマスターの資格とは、一時的に人型の所有を認めると言う簡易的なものだった。しかも僕が取得したものは「ペット」用の資格ではなくて、「使役型スカルピーモデル」用のものなのだ。
辺境の地を廻る際に必要となる、護身用の「ガーディアン」をレンタル出来るようにと随分前に取った資格だった。
人型の不正使用や不法投棄を避ける為の手段として、人型と接する場合は何らかの資格が必要とされるのだ。
「あぁ、使用種別が違うのは大丈夫なのよ。あの資格自体、身分証明みたいなものだから、サブだろうとメインだろうと本人のきちんとした身分が証明されれば、代理同伴くらいのことは特に問題ないんだって」
「はぁ、そんなもんなんですか・・・」
「ま、そんなもんなんで、悟浄くんを宜しく」
「よろしくっ」
悟浄がぺこりと頭を下げた。
手に持ったポットを一旦サーバーの脇に置くと、三つのカップを棚から降ろして、その湯をカップの中程まで満たす。今日のカップは、ロイヤルコペンハーゲンのホワイトハーフレース。持ち手の立ち上がりに対して、すっきりとした縦長で小振りなフォルム。腕底が緩い柔らかなカーブを描いているシンプルな印象のカップとソーサーが並べられた。
湯温は低温。
85度から70度。
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