- Camellia Sinensis -
 
 

 人型愛玩動物-通称ペット-とは、最近開発された新しい人型の形態のことで、自然硬化系細密造型石粉粘土式人型-通 称クレイファンドモデル-や、熱硬化系細密造型粘土式人型-通称スカルピ−モデル-や、化学反応硬化系無発泡樹脂式人型-通 称レジンキャストモデル-とは異なった成型方法で生み出された生物のことである。
 ペットは人間と同じような感情を有し、体温を持っていると言う点に於いて、他の三形態と大きく異なっていた。

 そう。ペットは感情を持つのだ。其れ故に・・・

「お願い。八戒くん、悟浄のわがまま聴いてあげて」
 悟浄の耳には届かぬように、オーナーは僕の耳元でそっと囁く。目の前の砂時計が、無情にも時を告げた。
「あっ。グッドタイミングだね、今日は・・・アールグレイ?」
 くんくんと鼻を利かせながら、悟浄は八戒の隣のストールに腰を降ろす。半ばよじ登るように椅子につこうとした悟浄の腰を、八戒は優しく掬い挙げて席につかせた。
「ありがとう。八戒、」
 頬に溢れた笑顔に、八戒はやれやれと眉尻を下げてしまった。

 あぁ。僕はやっぱり、この子のわがままを聴いてしまうのだろうか?

「で、交渉成立?」
「う〜ん。それがね、八戒くんたら、まだ渋ってるみたいでね・・・」
「そうなの?」
 悟浄は意地悪な目でちらりと八戒を仰ぎ見た。柘榴石に似た綺麗な色の瞳が、艶のある光を放つ。
「心配することないって。俺、ちゃんといい子にできるし、お前が新しく飼う予定の猫式とだって、絶対仲良く出来るからさ」
「まあ、とりあえず・・・」

 
 
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