I want to touch you
Kei Kitamura

<6>

−寝てたクセにっ!寝てたクセにっっ!!

 期せずしてゾロに触れていた事を、あろう事か本人指摘されてしまい、サンジは酷く狼狽えた。
 キッチンでロビンの為に紅茶の葉を蒸らしながら、サンジは苛立ちを隠せず、胸の煙草に手を伸ばす。取り出して銜える直前にお茶を淹れている最中ということを思い出し、そのままケースに戻した。
 小さく漏れた舌打ちに、本を読んでいたロビンが反応した。
「いつもあんな感じなのかしら?」
「え?いつもって…?」
 不意に声を掛けられて、握ったままの煙草を取り落としそうになる。
「仲が悪そうに見えていたけど、傍に居たいって思うのね」
 ふふ、と意味深な笑みを浮かべた。
「オレが傍に居たいのは、ロビンちゃんとナミさんだけさ〜♪紅茶入りましたよ」
 ティーカップに紅茶を注ぐ。ほのかにオレンジの香りのするオレンジティーを2つのカップに注ぎ終えると、トレイに置く。ソーサーとカップのカチャリという音が、ぼんやりと耳に届いた。
「どうしますか?運ぶ?」
「私はここで良いわ。ありがとう」
 トレイからカップを一つ取ると、少しだけ香りを楽しみ、口を付けた。
「美味しい。コックさんはお茶も淹れるのが上手なのね」
「出来ることならレディの為だけに、料理もしたいもんだよ。じゃ、コレはナミさんに運びましょう」
 ロビンの言葉にニッコリ笑うと、サンジはトレイを持ってキッチンを出た。


 キッチンを出て女部屋にいるナミに声をかけ、トレイごとお茶を渡す。
 ロビンやナミとの会話で先程の事など忘れてしまいたかったが、どうしても頭の片隅から取れてくれなかった。
 そしてまた寝ている剣士を忌々しげに見つめると、サンジは大きな溜め息をついた。

−なんでオレはあんなゴロゴロ寝てるばっかりの、芝生頭に触りたいって思ったんだ…

 触れたいと。


 触れてみたいと思った事に、根底にあるのか考えるのも嫌になって、サンジは夕飯のメニューを頭の中で組み立てる事に専念する。


 触れる。


 ただそれだけの事なのに、やたらと恥ずかしくなった事も忘れたくて。 


続く。next

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2002/8/27UP