I want to touch you
Kei Kitamura

<1>

「んナミすぁ〜んっ。ロビンちゅあ〜んっ。ドリンクはいかがですか〜?」
 暖かい昼下がり、サンジのアホな声が響き渡る。いつもの事なので、諦めてはいるが、ゾロとウソップの口からは溜め息が漏れた。
 船首に座るルフィはその言葉でおやつの時間だと気付き(正確にはお預け状態だったのだが)、サンジの元へ手を伸ばし言葉のごとく飛んで行く。
「サンジッ!!おやつはっ?!」
「うおっ…ルフィ、テメェ何しやがるっ!!ナミさんとロビンちゃんの飲み物が零れるじゃねぇかっ!!」
 ルフィの手はサンジの立っている目の前の桟を掴んではいたが、勢いが付きすぎてサンジの身体に体当たりした形で止まった。ぶつかられたサンジは、さすがと言うべきか、手にしたトレイを落とす事無く、ルフィ諸共転がって罵声を飛ばした。
「キッチンにあるから…って待て!!」
 最後まで聞かずにキッチンに飛び込もうとするルフィの首根っこを捕まえて、弾き飛ばした。
「何すんだよ〜サンジ〜」
「最後まで話を聞け!!その辺で作業してんだろ、クソ剣士と長っ鼻を呼んできてからだ。ホラ、呼んでこい」
 キッチンから飛ばされて、メインマストにしがみついた状態でルフィは大声で叫んだ。
「ゾロォ〜!!ウソップ〜!!おやつだぁぁぁぁぁ〜!!!」

(あのね…全部聞こえてるって)

 ナミはいつもの事ながら、眉間に血管を浮かばせた。
「叫ぶなよ、ルフィ。聞こえてるってば」
「聞きゃしねぇよ。ほら、手止めて行かねぇとまだ叫ぶぞ、あれは」
 作業の手を止めて、ウソップとゾロが腰を上げた。
 いつでもどこかしらが壊れているゴーイングメリー号の修理は、大抵はウソップが行っていたが、人手が足りないとゾロが駆り出されていた。

続く。next

back

2002/6/26UP