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Night Call
<1>
Kei Kitamura

綺麗に揺れるあなたの瞳
遠い夜を見つめてる

ことばは風に消されて
ためされてる唇 愛の震えに




[Night Call]



 夜になるとサンジは人格が変わったようになる。


「ゾロ…」
 普段は殆ど呼ばれることのないその名前。
 夜の帳が降りてすっかり闇に飲み込まれる船の一室で、サンジはいつもの表情を豹変させる。人を小馬鹿にしたような薄笑みを浮かべた口元は艶めき、薄く開かれて紅い舌先を覗かせる。上目遣いに見つめてくるブルーアイズは濡れて揺らめいていて、何かを待っているようだった。
「ゾ、ロ…」
 ゆっくりと自分へ向けられる細い指先は、夜目にも白く浮かび上がり、裸の肌をゆうるりと這い回り、淫らに熱を誘う。
 決して細いだけではない。不必要な肉はなく、均整の取れた筋肉を薄く身体に纏わせている。細い指先も節張っていて、女性の其れとは違う。掠れたハスキーヴォイスは何故か甘く、ブルーの瞳はその深淵に更なる闇を潜ませていた。
「ん…」
 動かないゾロに焦れたサンジが、形のよい薄い唇に自分の其れを押し付け、舌で歯列を抉じ開ける。ゾロは逆らうことなく、そっと口を開きサンジの舌を迎え入れる。差し込まれた舌を軽く噛むと、驚いたように引かれる其れを追いかけ、深く絡ませた。
 微かに口腔内に残る煙草の苦い味も、いつものことで、いつしか其れも甘い痺れを伴い官能に火を灯す。
「ふっ…ぅん…」
 角度を変え、唇が離れる時に漏れるくぐもった声と濡れた音。長い間お互いの口腔を貪り合ううちに、肩に置かれた指と、立ったままの膝がガクガクと震えだした。
「どう、したい?」
「…ぁ…」
 唇が離れ、立っていることも危ういサンジの細い腰にゾロの逞しい腕が回される。立ったまま更に深く食い尽くすように絡ませる。
 腰に押しつけられるサンジのモノは既に熱を孕み硬く立ち上がっていた。


 男相手にセックスをしたことなど、今の一度もなかったというのに、不思議と違和感無く受け入れられたのはサンジの夜にしか見せることのない表情に煽られたからだろうか。
 小憎らしいあの飄々としたサンジを啼かせてみたいと思ったのは事実だが、抱いて胸に残るこの痼りは一体何なんだ。
 サンジのセックスの相手は自分でなくてもよいのだろう…。
 熱く持てあます身体を慰めてくれる相手であれば、誰だって良かったのだろう…。


「ゾ…ロ…も、立っ…てらん…ね…」
 離した唇から途切れ途切れに願う声に、腰に回していた腕を外すとガクリと崩れ落ちた。
 荒い息を吐きながら座ることもままならず、横たわるサンジの傍らにしゃがみ込み汗ばんだ金の髪に手を差し入れてゆっくりと梳く。ピクリと肩を揺らし反応する。
「キレイな…髪だな…」
「…っ」
「肌も白いな…」
「やっ…めろよ…」
 髪だけをゆるゆると愛撫する指と低く囁くような声に、サンジの頬が羞恥の為か紅く染まり、むずがるように首を竦めて制止の言葉を紡ぐ。
「腰も細ェし…」
「もうヤメロって言ってるっ!」
「目が潤んでるぜ…?まだ何もしてねぇよ?」
 髪に絡ませていた指を紅く染まった頬に滑らせ、背ける顔を強引に引き寄せ唇が触れ合うすれすれまで近づける。
 息がかかるくらいに近づけた唇が震えて、きつく結ばれていた。それすらもこじ開けサンジの全てを暴きたい。
 蒼い揺れる瞳に自分だけを映させたい。
 そんな凶暴な考えが頭をよぎる。
「ヤルだけだろ…。早くしろよっ…」
「そんなに俺に抱かれたいか?」
「…っ」
 横たわるサンジの上に乗り、キッチリ着込んだジャケットの合間から手を差し入れ、シャツの上から硬く立ち上がりかけた胸の突起を掌で円を描くように撫で回す。まさぐり、指でキリキリと摘んでは親指で押しつぶす。
「ん…」
 顎を掴み、背ける事を許さない。でもその瞳は閉じられて、緩慢な愛撫に睫毛が震えている。それを見ながら唇を舐める。頬に滑らせ耳朶に辿り着いた舌はザラリと音をサンジの耳に残し、首筋に降りていく。
「なぁ…まだ触ってねぇぞ、ココ…」
「ひ…ぁ…あっ…」
 首筋を擽りながら股間の熱い塊を不意に服の上から撫で上げると、ビクビクと身体を震えさせながら涙を零す。そんなサンジの顔を覗き込み、笑いを漏らした。
「相変わらずいい感度だな。1週間自分で出してねぇのか?」
「は…ぁん…っんっ…や…」
「まだ撫でてるだけじゃねェかよ。どうすんだ、これからよ?」
 布地の上から擦られるもどかしい感覚にサンジの腰が揺れ、時折足がピクリと跳ねる。
 ゆるやかに服の上から続く甘い責め苦に蒼い瞳からは涙が溢れて止まらない。喉からは喘ぎとも啜り泣きとも思える細い声が漏れるだけ。
「っく…う……も…ぃやぁ…」
「イヤじゃ分からねェだろ?どうして欲しいんだよ?ん?」
「ひ…ぅ…ぬ…がせて……」
「脱がせてどうすんだ?」
 力の入らなくなった指を、覗き込んでいるゾロの頬まで持ち上げる。ギュッと閉じていた瞳を開くとゾロの深い翠の瞳と視線が絡み合う。
「さ、わって…もぅ…ガマ、ンできねっ…っあ……」
 呟いたサンジの唇に自分の其れを重ね、軽く音を立てて離す。まるで褒美だと言うかのような触れるだけの口付け。
「いいぜ…脱がせてやるよ。全部、な」


  隠しているお前の全てを。



あなたは嘘つきな薔薇
いま心 なくしたまま

枯れてしまいたいのなら
その胸をあずけて

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2002/1/4UP



うう…ごめんなさいっ。こんな話を続きモノにしてしまって(T_T)
もうコメントの仕様がナイです。暫しお待ちくださいませ。
*kei*