Kei Kitamura
Vol.2
俯いて声を殺して泣いているサンジにゾロは盛大に困った。 困って仕方なく隣に腰を下ろした。 ただ黙って赤い花を見ていると、不思議とくいなを思い出す。 −− こんな時期だったか… 赤い花に紛れて白い花が一輪揺れていた。 曼珠沙華 赤い花 なのに、時折間違えたように咲く白い花。 つらつらとどうでも良いことを考えながら、ゾロはそっと隣を伺う。嗚咽こそ聞こえないが、サンジはまだ顔を膝に埋めたままだった。 暫く黙ったままで二人並んで座っていたが、サンジがゆっくり口を開いた。 「ココにゃジジィの仲間の墓がある」 「…?」 「ジジィの代わりにオレが弔いに来た」 ゆっくりと胸ポケットから煙草を取り出すと、火を点け煙を空に吹き上げる。横顔は前髪に隠れて見えないが、恐らく目は赤く腫れているのだろう。 「酒の一本でも振りかけようと思って、ココに来た。そしたら一面に花が咲いていた。あんまり見事で綺麗で…息が詰まった」 「…そうか」 ゾロは一人分程空けた所に座っているサンジの背中を軽く二度叩いて、風に揺れる髪をくしゃりと撫でた。 サンジが顔を向けると、ゾロは前を向いて花を見ていた。 心の中に土足で踏み込む事をせず、そこに座っているだけのゾロの横顔に、不意に胸を突かれた。 「ジジィから仲間を奪ったのはオレだ…。ココの墓はそいつらのじゃねぇけど、それでも一言詫びを入れたくて来た。ジジィの仲間を奪ってゴメン。ジジィの足を奪ってゴメン。ジジィの全てを奪ってゴメン…って」 時間がゆるゆると流れているようだ。 銜えたままの煙草からユラユラ煙だけが立ち上る。 ゾロは大きく息を付いた。 「お前はそんな風に言うが、お前に生かされている俺たちはどうなんだ?俺だって人を食って生きてる。誰だってそうだろ。綺麗に生きている人間なんていやしねぇよ」 サンジは緩く首を振った。 「違えるな。負担とか犠牲とかそんなものは、自分に対しての欺瞞に過ぎない」 ゆるゆると振られる頭を、ゾロは大きな手で軽く掻き回した。 「生きるってのは、そんなに難しいモンじゃねぇだろ」 目の前にある赤い花にゆっくり手を伸ばし、そろりと花弁を撫で上げた。愛おしむように花を撫でる白い指が、赤い花と交わり白と赤のコントラストを生み出す。それがとても卑猥に見え、ゾロは思わず目を逸らした。 「コレは毒がある。気を付けろ」 「毒…?」 ピクリと動きを止め、サンジが手を引いた。 「彼岸花は死人花とも言う」 「…こんな綺麗なのに?」 「禍々しいまでの赤い色と、彼岸に咲くからそう言われてんだろ」 「彼岸?」 「彼岸は死者を祀る。年に2回。秋のその時期に咲くから彼岸花と呼んでいた」 「…オマエは誰に手向ける?」 薄く笑いを浮かべ、銜えた煙草を土に押しつけた。 剣士は笑いながら空を仰ぐ。 「取りあえず、くいなにでも送っておくさ」 「…そうか」 「お前は?」 「え…?」 「お前は、誰を思う…?」 「…オレは……」 |
2003/11/11UP
ホラね…すっごい短い話だったんですよ、コレ(汗)
なのに引き延ばすから…(T_T)
ゾロ誕生日なのに、こんな話で、しかも短くてゴメン!
Kei Kitamura