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CHANGE OF HEART

Kei Kitamura

<11>

「ルーフィー!」
 もうすぐおやつの時間だというのに、マストの天辺にある見張り台に登ったままで降りてこないルフィを不審に思ったナミは、読んでいた本をサイドテーブルに置くと、見上げてルフィを呼んだ。
「ん?何だ、ナミ」
「何だって……」

……アンタの好きなおやつの時間じゃないの

「何かあった?」
「いや、何もねぇ」
 キッチンで騒いでいると思ったら、いつの間にか出てきて見張りをしていたウソップと交代していた。定位置の船首には座らずに、今は見張り台で、大人しく海を見ている。ウソップはナミの側で相変わらず新兵器の研究開発に余念がない。
 ふと、ゾロの姿が見当たらないのに気付いたナミは、ウソップに問いかけた。
「ねぇ、ゾロは?」
「あ?ゾロならメシ食ってんじゃねぇのか。昼食ってなかったろ、アイツ」
 手作業を止める事無く答えるウソップの言葉に納得した。ということは、今キッチンにはゾロとサンジの二人が居る事になる。

……ルフィも居たのよね、キッチンに

 視線を向けたキッチンの扉の向こうは、今は静かだ。


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「もう一回……」
「もう言わねぇつったろ」
 ゾロは、抱き締めていた腕を放し、まだ呆然とした表情のサンジの頭を軽く叩いた。
「…んだよ」
「メシ」
「は?」
 サンジは、ゾロがまだ昼食を取っていない事を、その時ようやく思い出した。その直後、ゾロの腹の虫がキッチンに響き渡るくらい盛大に鳴った。
「……っ」
 その音を聞いて、それこそ船に響き渡るくらい盛大にサンジが吹き出した。
「ば…バカじゃねェ?昼にっ来ねぇから、だろーが」
 涙を浮かべて笑い転げるサンジを憮然とした表情でゾロが爪先で蹴飛ばした。それでもサンジの笑いは止まらず、耐えられないというように、両手で床を叩いていた。
 どうしてこうもゾロという男は、シリアスに欠けるのか。真剣に、せっかく色っぽい告白をかましたというのに、直後にメシ、としか言えないのか。
 嬉しいやら可笑しいやらで、サンジは一頻り笑い転げると、ようやく落ち着いたようで、目尻には涙を浮かべたまま立ち上がった。
「座れよ。メシ用意してやる」
「笑ってんじゃねぇよ」
 未だにクスクスと笑いの収まらないサンジを見ながら、ゾロがテーブルに着いた。
「あ…っと、もうおやつの時間か…。先にナミさんのドリンクとおやつ作らなきゃな」
「おい!俺のメシは!!」
 いきなりいつもの調子を取り戻し、ナミ優先に戻ってしまったサンジに、ゾロが慌ててテーブルを叩く。そんなゾロに、サンジはフワリと笑ってゾロの目の前にちゃんと盛ってある皿を置いた。
「冗談だよ。早く食え」
 銜えた煙草に火を点けたサンジが窓に目を向ける。小さな丸い窓に広がる青。


 落ち着いてしまった気持ちのせいだろうか。

 その青はいつも見る空よりも、ずっと綺麗に見えた。



Fin
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2002/5/7UP

え?終わり?
…尻切れトンボって感じ…。
や、ルフィの気持ちを入れるのを忘れてますね、コレ。
番外編でルフィの気持ち入れ込みます。あと、ゾロの気持ちね…。難しいっ。
いやしかし、何が書きたかったのかイマイチ不明確になっている気がします。
長くなるとダメですねぇ…。反省して、精進します。
*kei*