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※このお話は『雨やどり』というパラレルの学生ゾロサンです※

Honey Honey Crescent Moon

<Vol.2>

「なぁなぁ、アレがお宮の松らしいぜ?」
「何だそりゃ」
「さっき話したろー?金色夜叉のお宮の松だよ。あんなトコにポツンってあるんだな。あ、何か銅像もある。へぇ…」
「止めて見るか?」
 通り過ぎる松を横目に問い掛けた。
「ん、いや。もう見たから満足。次行こう」
 次行こうも何も、横を通っただけで降りても居ない。まぁ、雨が降っている中、わざわざ松の木を見る必要も無いだろうが。
「次…は、ドコだ?」
「ビーチにでも行きたかったけど、雨降ってるしなぁ。ハーブガーデン行こう」
 サンジはそう言いながらカーナビの情報を入力した。
 得意技は迷子というゾロに取って、このカーナビは画期的とも言えるシロモノではあるのだが、実は自分で操作する事が出来ない。サンジと出掛ける時は、サンジが操作しているので、右に曲がれだの、直進だの、カーナビの妙な声に従って行けばビックリする程早く着くのだが、事これが一人での外出になると使えないので、全く意味を成さない物に成り下がっている。
 カーナビは相変わらず妙な声を出しながら、指示を出す。それに従いステアリングを切った。
 ハーブガーデンとやらは、ゾロにしてみれば何やら葉っぱが大量にある場所としか思えなかったのだが、サンジが楽しそうにしているので、きっと楽しいトコロだったのだろう。
 この葉は何の料理に使うと良いとか、色んな説明を真剣に聞いているサンジを横目に、こんな葉っぱもサンジに掛かると美味い料理に変身するのだと思うと、ちょっと楽しみになった。
 説明を聞いてベランダのプランターで育てられるような数種の種は買ったようだが、さすがに鉢植えは今日買ったところで明日も旅行でウロウロするので、断念したようだ。
 雨が降っているので、外での昼食(サンジの手作り弁当)は諦めて、駐車場の車の中で食う事になった。
 しきりに外で食べたかったと言うサンジに、ドコで食っても美味いと言うと、大人しくなった。
「雨止まねぇな〜。何かオマエが絡むとどうも雨が降るよな?オマエ雨男じゃねぇのか?」
「…何で俺なんだよ」
「だってオレ基本的に晴れ男だし」
 どんな根拠だ。
 手に付いた米粒を舌で舐め取りながら、
「そうかよ。でも葉っぱガーデンとやらは楽しかったんだろ」
 そう言ってまたおにぎりに手を伸ばす。
「ハーブガーデンだっつーの。まぁ…楽しかったケドよ。でも太陽の下で見たかったなーって思うじゃねぇか。ま、天気ばっかりは文句言ってもしょーがねーけど」
「じゃ今度また天気の良いときに来ればいい」
「…簡単に言ってくれるじゃねぇか」
「国内なんだし、そんな遠い場所でもねぇし、来ようと思えばすぐ来れるだろ。お前の休みの時に晴れたらまた来ようぜ」
 一瞬だけ空いた間に顔を上げると、少しだけ驚いた顔で聞き返してきた。
「…オマエも、一緒に…?」
「はぁ?俺一人で行く訳ねぇだろ」
 訳が分からんと、弁当箱の隅に残っていたパセリをポイっと口に放り込む。綺麗に片づいた弁当箱に合掌すると、おしぼりが手に掛けられた。米でカピカピになった指を拭い、サンジに返すと妙な顔をしたまま弁当箱を片づけ始めた。

−− 何だ?

 凄く妙な顔をしている。
 口元はへの字に曲がっているし、顔は前髪で殆ど隠されているが、ほんのり頬が紅い。
 まぁいいか。
「なぁ、次ドコ行くんだ?」
「あ、ああ…そうだな」
 膝の上に拡げていた地図をパラパラ見ながら、
「あ、そだ。秘宝館だ、秘宝館に行こうぜ。あんまり遅くなって閉館してたら見らんねぇし。熱海城も見れるし、観光っぽいだろ」
「秘宝館ねぇ…。大体何の宝なんだ?」
「知らねぇよ。でも、きっと秘宝ってくらいだから、すげぇ宝じゃねぇの?」
「すげぇ宝って何だよ」
「知らねぇってんだろ。行ってみりゃ分かるさ。珊瑚とかのアクセが売ってありゃ、ナミさんやビビちゃんのお土産に出来るんだけどな〜」
 あれだけからかわれたと騒いでいたのに、律儀にナミに土産を買ってやろうと思うのは、どうなんだろう。どうせまた突かれてへこたれるくせに。
「まぁ、いいか」
「何だよ?何がまぁ、いいかなんだよ?」
 ゾロの呟きを聞き咎めたサンジが口を尖らせるが、それを無視して車を動かした。
 微妙に機嫌が良く無かった愛車も、今のところ快調に動いている。このままご機嫌でいてくれと思いながら。

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2004/9/27UP


短いですが、一区切りなので。
実はこの回がすっごい時間かかったのでした…;;
うう…遅くてスミマセンでした。