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繭(前編)
Kei Kitamura

 ゾロはいい加減苛立ちを隠せないでいた。
 理由は至極簡単であり、難しくもあった。本人にとってはとても簡単な問題だったのだが、回りには理解できない苛立ちだろう。


 答えはサンジが握っている。




「いい加減にしろ」
 捕まえようとするとスルリと逃げていたサンジを、ゾロは一週間ぶりに捕まえることに成功した。
 新しいタバコに火を点けたばかりのサンジは、うっかりした瞬間を捕らえられてしまった事に、眉間に皺を寄せる。口の端に銜えた煙草をもぎ取り、海に投げ捨てた。
「環境汚染」
「あ?何が?つーか、話そらすなよ」
 掴んでいたゾロの指を一本ずつ剥がして、スーツの内ポケットからまた新たにタバコを取り出す。そんな些細な動作にも、ゾロを焦らしはぐらかすサンジの意図を感じてしまう。
「話をそらす?一体何の話だ?いい加減にしろ、だけじゃ意味が分からねぇよ。主語述語、起承転結含めて説明しやがれ」

−− いちいち人の揚げ足を取りやがって…

 サンジの言い草にカチンときたが、一言が十倍になって返ってくる事を今までの経験から分かっているゾロは、仕方なく口を開いた。あまり口が上手い方ではないので、直接的な会話しか出来ないが、それを知っているサンジが敢えて聞いてくるのだから話すしかない。
「お前、最近俺を避けてる。どうしてだ?」
「別に避けてなんかいねぇだろ。ちゃんと朝も昼も夜も飯時には起こしてやってるじゃねぇか」
「そうじゃねぇ。セックスするのを避けてるって言ってんだ」
「そうだっけなぁ」

−− そうだっけなぁ…じゃねぇだろ!!

 鉄仮面と呼んでやろうと思うくらい平然とした表情で、サラリとかわすサンジにゾロは益々苛立ちを感じた。
「避けてんじゃねぇとしたら、一週間近くやってねぇのはどうしてだ?」
 飄々と紫煙を吐き出し、ゾロと視線を合わせようともしない。返事もなく、横を向いているサンジの表情が伺えない事にゾロの堪忍袋の緒が切れた。
「こっち向け。んで、ちゃんと返事しろよ、オイ。毎日やってたのがいきなり来なくなったりしたら、変だって思うだろうがよ」
 サンジの薄い肩を掴み正面を向かせた。両手で掴んでいるために、身体を捩ったところでゾロの手は振り解けず、仕方なくサンジは顔を上げた。
 サンジの剣呑な瞳がゾロと対峙する。
 垂れ気味ではあるが、目つきの悪さは口の悪さと同じくらい凶悪で、座ってしまったサンジの目には、己の目つきの悪さを棚に上げ近づきたくねぇ、と思ってしまう。
「オマエがそんな事を憶えてるたぁ思わなかったぜ。毎日犯っても、一週間やんねぇっつっても、テメェの筋肉性脳味噌じゃ感じねぇもんだと思ってたぜ。思考回路で迷子んなってるのがオチだと思ったが、そりゃ認識を改めなきゃなんねぇようだな」
 口の端に銜えた煙草はそのままに、よくもまぁこれだけ口が回るもんだと、ある種感心してしまった。いつもの事だが、こいつはきっと口から生まれてきたに違いないと思わざるを得ない。
 ハッキリとした返答を期待していた訳ではないが、ゾロの怒りもサンジのマシンガントークで萎えてしまった。
 大げさに溜め息をつき、肩を掴んでいた手を離した。手が離れた事に小さく息を吐いたサンジを見逃さず、背中に回しその細い身体を掻き抱く。怒ったり問い詰めたりしたところで素直に返事を返す奴ではなかった事を思い出し、別の角度から攻める事に切り替えた。
 何が起こったのかをサンジが理解する前に、ゾロは耳元に唇を寄せる。
「サンジ…もう我慢出来ねぇよ…抱かせろ」
 低く囁く声がサンジの耳に吹き込まれ、その吐息のような声にサンジの身体がビクリを震え、銜えていた煙草がポトリと落ちた。
「なぁ…何で逃げてた?」
「…ふっ…」
 続けざまに囁かれる声に現状を漸く理解したサンジが、ジタバタと暴れ出す。
「テ…テメェ!クソ野郎っ!離せ!ミドリハゲ!何さらしてやがるっっ!!」
 サンジの両手が拳を作り背中を力任せに叩いてくるが、そんな事ではゾロの締め付けを剥がす事は出来ない。
「いっ…アホ。離すかよ」
 サンジの弱い耳の後ろにちゅっと吸い付き、舌を耳に差し込んだ。舐るように蠢く舌が湿った音をさせている。直接的にその音を流し込まれたサンジの抵抗が次第に弱くなっていった。
「っ…やめろっ!キミドリマンの分際で何処舐めてやが、るっ!」
「お前が答えてくれねぇからだろうがよ。ん?どうして俺を避ける?」
「ふっ…バッカ野郎…んなトコで喋るなっ…」
 きつく握られていた拳はゾロのシャツを掴み、小刻みに震えている。
「もう…俺とはセックスしたくねぇってこと、なのか?なぁ、サンジ?」
「…っ!」
 がっちりと抱き締めていたゾロの腕が、すっかり抵抗の止んだサンジの背筋をゆるゆると辿る。首筋に顔を埋めている為にサンジの表情は伺えない。
「答えろよ…サンジ……ってぇ!」
 サンジが肩に噛みついた痛みに、ゾロは顔を上げサンジを見ると、目元を赤く染め恨めしそうな目でゾロを睨み付けていた。
「違う…」
 サンジはゆっくり目を伏せ、小さく呟いた。コトリとゾロの肩に額を付けて擦り付けるような仕草にゾクゾクと痺れが背筋を駆け上がる。
「違うって…何がだ?犯りたくねぇってのが、違うのか?」
 額を付けたままコクリと頷いた。そのまま口を開こうとしないサンジにゾロがそっと問いかける。
「そうか。じゃ、この一週間は焦らしてた、だけか?」
「違う…」
 フルフルと頭を振るサンジの髪が肩を擽った。あやすように背中を撫でてやりながら、サンジの頭に頬を擦り付ける。
「…理由、聞かせてもらえねぇのか?」
「……」
「なぁ…」

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Dear 魅月ライ様vv

2002/5/29UP


ああまた続いてしまったぁ…。しかもこんな中途半端で止めてしまったぁ〜(爆)
こ、後編で終わるといいなぁ…。前中後編になったらすんませんっ。
説明が長くなってしまうのが、申し訳ない次第です。
魅月様、今暫しお待ちくださいませっっ。

Kei