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The game of moonlight

<前編>

 淫靡な空気が充満している。ねっとりと身体に絡みついてくる熱気に、まとわりつく闇。辛うじて入ってくる月光に照らされているのは、白く艶めく足だけ。
 身体を駆けめぐる熱に思考を掻き回される。熱というにはあまりにも甘美な、痺れるような快楽。
 思うように動かないだろうサンジの腕が床に投げ出されていた。吐息と共に漏れる声は快楽に濡れ、それすらも熱を煽る要素となる。

−−ええと…何でこんな事になったんだ?

 朦朧とした意識の下で思考は空回りし、未だ荒れ狂う熱に翻弄される。身体の下にある汗やあらゆる液体に濡れた白い肌に、ぬらりと舌を這わせると、ヒクリと肩が揺れた。

−−足りねぇ…

 挿入したままの秘所が、脈を打つ熱棒を時折締め付けては、誘い込むように蠢く。腰を掬うように持ち上げ、引き寄せて奥まで押し込むと、仰け反った喉が誘っているように見えた。誘われるままに喉元に歯を立てる。
 甘い。
 どこもかしこも甘いサンジの身体を、舐め回し、まさぐり、息も継げないくらいの愛撫を繰り返す。

−−まだ…足りねぇ…





 事の起こりはサンジの他愛ない一言から。そんな軽口はいつもの事で、何がどうしてそんな事に発展したのかは分からないが、間違いなくサンジの一言から始まった。
「突っ込むだけで、芸が無いんだよ、テメェのセックスは」
 いつもの夜だった筈だ。みんなが寝静まった後に、二人で飲む事が日常になりつつあり、その後にセックスに雪崩れ込む事も、数日おきに行っていた日常の事だった。
 静かに飲んでいた二人を月が照らす。心地よい酔いに、ぼんやりと月を眺めていた。飲まれる程には飲まないのが、サンジのポリシーのようで、自分の限界を知っているから程々にしか飲まない。だから、酔っている訳ではなく、単なる軽口だったのだろう。
 そうは思うが…
「…求めてみろよ…。焦がれるくらいオレを欲しがれよ」
「そうじゃねぇ…っつーのか?」
 心外だ、とばかりにゾロが眉間の皺を濃くした。
 いつだって手に入ったかと思うと、スルリと抜け出すのは、サンジの方だ。捕らえどころのないサンジをこの腕に抱き締めて、欲しいと思っているのに。
 いや、手に入れたと思っていたのに。
 ゾロの気持ちも、サンジの掌から零れて落ちているのだと、思わざるを得ない言葉を聞かされて、苦い物が込み上げてきた。

−−じゃぁ、お前は俺を欲しがってるとでも言うのかよ…

「はっ!ありゃ運動だ。汗かくだけの、セックスっていう運動だろ?鍛錬にもなりゃしねぇだろ、鍛錬バカのオマエにはよ」
 銜えていた煙草を海に投げ捨て、グラスを傾けて中の酒を飲み干した。苦いのだろうか、眉間に皺を寄せて胸のポケットから新たにタバコを取り出す。
 何を言い返すでもなく、ゾロもグラスに口を付ける。サンジが唐突に何かを言い出すのには慣れていた。これもいつもの延長上にある戯れ言だと。そう思わなければやってられない気分になっていた。
 だが、タバコを取り出すものと思われたサンジの指には、違う物が挟み込まれていた。サンジはゾロの目の前にそれを翳し、妖艶な笑みを浮かべた。
「なぁ…試さねぇ…?」
「ヤベェ薬なら、いらねぇぞ」
「合法ドラッグだよ。心配すんな」
 ゾロの手からグラスを奪うと、半分程残っていた酒にパラフィン紙を開き、中の粉を溶かした。
 合法だろうと、そうでなかろうと、クスリなんて物は怪しくて口にする気にもなれない。呆れて見ていると、サンジがその酒を口に含んだ。
「おい…」
 お前が飲んでどうする…という言葉を出す前に、口づけられた。細いとは言えサンジは男で、思いの外力強い腕で首を引き寄せられ、口を塞がれクスリが溶け込んだ酒を口腔内に流し込まれる。生ぬるい酒が喉の奥を通り、コクリと動くゾロの喉をサンジの手が辿った。
 そのまま深く唇を合わせてくるサンジの舌が、ゾロの歯列を割り上あごを舐め上げる。熱い舌を絡め合わせてお互いの口腔内を貪りあうのに、そう時間は掛からなかった。
「…ふ…」
 長い時間貪った唇を離すと、唾液が糸を引いてゾロとサンジを繋ぐ。吐息に甘い響きが籠もったのを、ゾロは見逃さない。紅く濡れる唇を、舌でそっと舐めた。
「…いつ効いてくるんだ?」
「…さぁて、酒も入ってるから、もうすぐじゃねぇの…。楽しみだぜ、なぁゾロ。オマエがどんな風に乱れるのか、見せて貰うぜ」
「じゃ、覚悟すんのは、お前だな」
 唇が触れ合う寸前のところで囁き合い、視線を合わせると、青い瞳が潤んで、その深淵を覗かせる。
 映っているのは、こんなにも熱い眼差しでサンジを見つめている自分。
 こんな自分を見ているのに、何故サンジは求められていないなどと思うのだろう。こんな欲情に濡れた目をしているのに、サンジには伝わらないのだろう。

 コイツの全てを手に入れたいと思うのは、傲慢だろうか。
 それを望んでいるのは……サンジだ。

 求められたいと。
 欲しがれと。


−−クスリなんて使わなくても、充分だろ

 分からせてやりたい。
 どんなに自分がサンジを求めているか。
 否。
 もう分かっているのかもしれない。コイツの何かが其れを確かめずには居られないのだろう。言葉を欲しがるでもなく、証を欲しがるでもなく、抱かれる立場を確認しているのだ。
 その、身体で。

「上等だ。楽しみにしてる、だから……」
 首に腕を巻き付けられ、誘われるようにサンジを床に押しつけた。


後編>>>

2002/5/11UP



ぐぁぁぁ〜…。イカン。続いてしまいましたっ。
後編はエロのみです。ええ、ここからがゾロ獣発動です。
あわわわ。スミマセンっっっ(汗)

*kei*