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酒と煙草と

<1>

 その夜は月がとても綺麗で、気紛れにいつもケンカばかりしている相手を酒の相手に誘ってみた。思いの外簡単に誘いに乗ってきたゾロに、付き合いにくい奴だと思っていたが、そうでも無いのかもしれない、と月夜の甲板で静かに飲んだ。どうせ見張りはゾロの番だったので、付き合わせると言うよりは、付き合ってやるという思いもあったのかもしれない。
 でも、酔っていた。
 自分の許容量くらいは把握している。コックが酒に飲まれる訳にはいかないので、いつも飲み方は考えていた。それが、このゾロと言う男はザルを通り越して柵に違いない。とんでもない飲み方をするし、何しろ量が半端じゃない。付き合って飲んでいるウチに、自分のペースを乱されてしまった。
 同い年の男として、負けたくないという気持ちが強かったのかもしれない。普段にない飲み方をしてしまった。
 失態だと思ってみても、その時は既に酔っていてそんな事も分からないような状態になっていて、自分が何を口走っているか等と考える思考回路は既にドロドロに溶けきっていた。
 そうだ。
 酔っていたのだ。





 気が付けば男部屋のソファの上で寝ていた。
 微睡みから醒めていくウチに昨夜の記憶が途中でプッツリ途切れている事に気が付く。

−−ん…と…

−−…確か、昨夜は月が綺麗で、甲板でゾロと飲んでて……

 何度思い返そうとしても、記憶はそこまでで止まってしまう。果たして自分がどうやってソファに寝たのかすらも憶えていない。

−−参ったな…

 憶えていないものは仕方がない。
 ごく単純にそう考え、身体を起こした途端、頭に走る鋭い痛み。
「っ……」
 これは、あまり考えたくない事だが、どうやら宿酔いらしい。ズキンズキンと断続的に襲ってくる頭痛に、サンジはそのまま身体をソファへ預けた。

−−そんなに飲んだか?…記憶がねぇんだもんなぁ…飲んだかどうかなんて憶えちゃいねぇよ…

 やはりあの男を酒に誘ったのは間違いだったと、サンジは暫く疼く頭を抱え後悔の渦に巻き込まれていった。だが、もうすぐ夜明けで、当然腹を空かせたクルー達が起き出してくる。
 鐘を鳴らし続ける頭を宥めつつ、ソロソロと起き上がりバスルームへと向かった。シャワーでも浴びれば少しはマシになるかもしれないと思い、タオルを肩に引っかけて男部屋のハッチを開くと眩しい朝日が差し込んでくる。その光りすら閃光のようで眩しすぎて目を開けていられない。
 ヨロヨロ壁を伝い漸くバスルームに辿り着いた。

−−そういえば、ザルのサクマリモは見張りやってんのか…?

 熱いシャワーを浴びながら、ポツポツと記憶が戻ってくる。
 刀馬鹿で鍛錬馬鹿なゾロが、思っていたより付き合いやすいと思った事。
 ルフィ達と一緒に居るようになった事や、ナミさんやウソップが仲間になった時の事などを、そう口数の多くない剣士が語った事など。話が端的過ぎて分かりづらく、省略された部分がかなりあったとは思うが、それなりに経緯は分かった。
 この船に乗るクルーは皆、それぞれに何かを抱えている。
 振り払い、包み込み、裡に隠し、そうして今、前を向いて進んでいる。

−−って、まぁそんなことはいいんだ、今はっ!

 問題は……

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2003/7/7UP

短かっ!はうっ…ここでUPするのはどうかと思ったのですが、
これから原稿突入で今度はいつUP出来るか分からないもので…(汗)
*kei*