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海
海べのあさ
文/Z・トペリウス(フィンランド) 絵/おのちよ 訳/万沢まき(アリス館) |
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『サリーのこけももつみ』に続くサリーの歯が初めて抜ける朝のお話。海辺に暮らす暖かな家庭とその生き生きとした生活が描かれ、潮の香りが漂ってきそうな絵本です。大人の世界に、ごく自然に同居して生きる子ども達の姿を描いています。
私たち大人は、大人の世界から子どもたちを隔離してはいないか、私たちは子どもたちの入り得ない、不自然な大人の世界を築いてしまってはいないか、子どもと大人との強固な架け橋を、きちんと用意しているか...などと考えるのにもいいかもしれませんが、それ以前に、海辺の暮らしや、家族の暖かさをほのぼのと楽しめる絵本です。 |
屋根うらべやにきた魚
作・山下明生 絵・太田大八(岩波書店) |
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海の波、におい。生活。ホウボウという名の魚。シュールな内容のはずが、しっかりとした実在感を感じる。小4娘の心からしばらく離れなかった本。
子どもの言葉より |
みみずくとねこのミミー
作/エドワード・リア 絵/バーバラ・クーニー 訳/くどうゆきお(ほるぷ出版) |
黒ねこサンゴロウシリーズ
作/竹下文子 絵/鈴木まもる |
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主人公はサンゴロウという海の男。男気たっぷりのサンゴロウがその背後に見せる哀愁が、この本の魅力です。しかし、この説明だけでは、どうして小学生のこども達に人気があるのかわからないことと思います。種明かしは、猫です。サンゴロウが猫であるがために、この本は誰の手にも取られるのだと思います。これには感心しました。だって主人公が人間の中年男で、題名が「三五郎」だったら、どれだけの子どもがこの本を手に取ることでしょう。少年の何人かは手に取ることもあるかもしれませんが、少女にはきっと受け入れにくいものとなるに違い有りません。それなのに、主人公が猫で、名がカタカナだということで、どれほど入口が広くなることか。これにはあっぱれです。やはり、どんなに良い本であっても、手に取られなければ始まりません。 それにしても、竹下文子さんは、本当に海が好きなのでしょう。海に住んでいたこともあるのではないかと思ってしまいます。本を読んでいると、私の中に密かに存在していたのであろうちっぽけな海の記憶が、大きく広がっていきます。本を手にしながら、あの広い海の、あの肌を刺すような潮風と日差しを全身に浴び、いっぱいに心を解放することができるのです。不思議な書き手だなぁと思います。 ところで、実は先日、夕食時にサンゴロウが話題にあがりました。そこで、私の中でサンゴロウシリーズとドルフィン・エクスプレスがごちゃ混ぜになっていることが判明。どちらのシリーズも他の本と混じって同時並行に借りてこられるものだから、続き物とは意識せずにその場限りで読んでいたため、宅配便をやっている猫が記憶喪失でしょう? ...などと私が言い始めたので、娘も息子もあきれて、もう大変な大笑いになってしました。 これはもったいないことです。せっかく続き物なのですから、やっぱりきちんと続き物として読んでみたいものです。そこでこの機会に、はじめから通して読んでみました。そして、これはなかなかの大作だということに今更ながら気づかされました。 このシリーズは、きちんと1冊ずつが完結した読み物になっています。どれもがサンゴロウの出会う小さな事件を扱いますが、主人公はサンゴロウでありながら、述べられているのはサンゴロウが出会う誰か別の人の人生です。ところが、シリーズ全体を通して読んだときに浮き上がってくるのは、サンゴロウそのものの人生です。そして、シリーズ最終巻である「最後の手紙」において、サンゴロウは自らの意志により自らの影、封印された過去と対峙します。ここは、ゲド戦記を彷彿とさせられます。こうしてサンゴロウはまるごと全部の自分を引き受けて正真正銘のサンゴロウ自身となり、その生活スタイルは何も変わらないだろうけれど、輝かしい未来を想像させながら満足のうちに終止符がうたれます。 そして次の時代を担うテールが主人公となる「ドルフィン・エクスプレス」シリーズが始まるのですが、こちらにも時々元気なサンゴロウがチラッと現れるのは心憎い演出です。サンゴロウは、いえいえ、竹下文子さんは引き際、引かせ際をわきまえているなぁと思います。そして「ドルフィン・エクスプレス」のテールへと引き渡された時代は、さらにまた次の時代へと引き渡される気配があちこちに見受けられます。竹下文子さんの長編シリーズは、まだまだこれからずっと先まで、私たちを楽しませてくれるはずです。 そして何よりも、小学生の頃にサンゴロウシリーズを楽しんだたくさんのこども達が、大きくなってから再びサンゴロウシリーズを手にしたとき、その時こそが本当に楽しみだなぁと思います。(2007.1) 旅のはじまり − 黒ねこサンゴロウ 〈1〉 キララの海へ− 黒ねこサンゴロウ〈2〉 やまねこの島 − 黒ねこサンゴロウ〈3〉 黒い海賊船− 黒ねこサンゴロウ〈4〉 霧の灯台 − 黒ねこサンゴロウシリーズ〈5〉 ケンとミリ − 黒ねこサンゴロウ旅のつづき〈1〉 青いジョーカー − 黒ねこサンゴロウ旅のつづき〈2〉 ほのおをこえて―黒ねこサンゴロウ旅のつづき〈3〉 金の波 銀の風―黒ねこサンゴロウ旅のつづき〈4〉 最後の手紙―黒ねこサンゴロウ旅のつづき〈5〉 |
題 名 | 文 | 絵 | 訳 | 出版社 | |
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オッコーと魔法のかもめ | ベッティーナ・アンゾルゲ |
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とおやまあきこ |
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実際の島の暮らしはどんなものだろう。私は、一度でいいから、ちょっぴりでいいから住んでみたいな。 |
海のおばけオーリー | マリー・ホール・エッツ | マリー・ホール・エッツ | 石井桃子 |
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湖に海のおばけが出て大騒ぎ。海のおばけって…? |
トカゲのすむしま | 串井てつお | 串井てつお |
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鳥には鳥の道、トカゲにはトカゲの道。 | |
海中記 | こばやしやすお | こばやしやすお |
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これは見ていて飽きない写真集。しかしサメはいない。息子にはなんとしてもそれが不服らしい。 | |
にじいろのさかな | マーカス・フィスター(スイス) | マーカス・フィスター(スイス) | 谷川俊太郎 |
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きれいな背表紙に、思わず手を伸ばした。ストーリーは思った通りの展開だけれど、パステルカラーの海の中はとてもあたたかく、ほのぼのしている。続編「にじいろのさかなしましまをたすける!」「にじいろのさかなとおおくじら」 |
スイミー | レオ・レオニ | レオ・レオニ | 谷川俊太郎 |
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この本は教科書にも載っています。一人の力は小さくても、たくさんでまとまれば大きな力になる。 |
りえの海の旅 | 武鹿悦子 | 牧野鈴子 |
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海で遊んでいたりえはイルカと出会い、海の旅へとでかけます。ザトウクジラの歌、人魚の森、ずーっとずーっと昔のことを思い出す旅へ。 |
海にまつわるひとりごと