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環境問題
地球というすてきな星
作/ジョン・バーニンガム 訳/長田弘(ほるぷ出版) |
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ジョン・バーニンガムが熊野体験博に参加し、そこで得たビジョンにより作りあげたという絵本。世界遺産にも登録された熊野古道、日本古来からの魑魅魍魎も生きながらえているであろうその地で、西洋人のジョン・バーニンガムはどのようなビジョンを得たのだろうか。絵本は、おだやかな自然の中で遊ぶ2人のこども達の前に突如神様が現れて、世界を見にいこうと誘うところから始まります。
自分が「すてきな星」に住んでいることを思い出したいときに、読むといい本です。 |
水の伝説
作/たつみや章 (講談社) |
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泣き虫弱虫で都会の学校に馴染めずに山村留学で林業の村に来た少年が主人公です。ホームステイ先の同級生タツオが兄貴分として引っ張っていってくれるので山の生活にすっかり慣れたようにみえたものの、心の中ではお客様でしかなかった少年が、大雨による山崩れをきっかけに当事者にならざるを得なくなっていきます。そして、河童と出会い「女」と間違えられたことから、とうとう事件の渦中に巻き込まれてしまいます。頼りにしていたタツオとの断絶により、以前の弱虫光太郎に戻ってしまいそうになりますが...。
『ぼくの・稲荷山戦記』『夜の神話』との環境問題三部作のひとつです。この三部作は現代の深刻な環境問題を、日本人が古来からもつアニミズム的感性を刺激することによって訴えかけます。自然から切り離された世界に育ち、人々が信仰心を覚える機会がなくなってしまった昨今、たつみや章の作品は一貫して古来より続く自然と共存する智恵、生きる支えとなる信仰心を問うています。 小学校中学年でこの三部作を読み、高学年以降に古代少数民族を扱う『月神の統べる森で』のシリーズ、『イサナと不知火のきみ』等を読めば、思春期以降に人の心の隙間に入り込もうと狙う新興宗教やカルトに対抗するワクチンにもなりうるのではないかと思います。 (作者のたつみや章さんは、「有言実行」で活躍していらっしゃる現役熊本市議会議員とのことでビックリ!) 2007.2.5 |
ベンガルトラの森へ―バングラデシュ旅ものがたり E
作/門田修 絵/出雲公三(理論社) |
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絶滅の危機にあるベンガルトラと人間との共生について、作者自身がバングラデシュで体験したこと、話に聞いたことを元に、一人の少女を主人公にして物語っています。自然保護に対する考えに、ひとつの「こうである」という回答はないと考える作者は、様々な立場の人々が、各の考えを述べ、行動している様子を物語りの中で生き生きと描いています。 小5の娘が読むのに、ちょうどいい時期だったように思います。(2003.02) |
アフリカゾウ56頭移動大作戦 E
著/神戸俊平(学習研究社) |
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アフリカゾウを移動させなければならなかったのはなぜか。ノンフィクションの物語。「悲しいところもある。(小5娘談)」(2002.12) |
クジラが浜にあがった朝 RS
作/A.コールリッジ 訳/定松正(さ・え・ら書房) |
一人の少年が、打ち上げられたクジラを発見し、そのクジラを海にかえすまでの2日間を描いている。クジラ保護の立場から、クジラが浜に打ち上げられていた場合、どのように対処したらよいかを広く知ってもらいたいために書いた本だということです。
私たちがそのような現場に居合わせることはまずないとは思うけれど、それらの知識は多くの人が当然のこととして知っていて良いとも思いました。 ただ、主人公の少年が助けたいと思った一頭のクジラも、違う文化で育った別の少年であったならごちそうだと考えたかもしれないことも、こども達には伝えておきたい。(2002.11) |
ゾウとクジラがともだちになった日
作/アラン・バルトマン(フランス) 訳/やまなかきよみ(福武書店) |
密漁から逃れる陸のゾウと海のクジラが、力を合わせて密漁者を撃退します。
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野生犬ドール E
作/マイクル・フォックス 訳/藤原英司 絵/加藤孝雄 (国土社) |
「何が大切かを知った人は、そのために働かなければならない。」という最後の一文は、やわらかな娘の心に一撃を食らわしたのではないだろうか。少しずつ、今ではない未来、将来の存在に気がつき始めた小5の娘、勉強もスポーツも音楽的センスも??だし、ものごとの理解力や自己表現に関しては絶望的ではあるけれど、感受性だけは人一倍もっています。一撃を浴びたからといって何が変わるわけでもないけれど、さてどんな人生を送ることやら楽しみです。 野生に生きる動物の生活を観察して書かれているこの手の本を、娘 は毎回借りてきます。オオカミ、コヨーテなど家族とともに群れをつくる彼らの生活は、彼女に大きな魅力と安心感を与えるように思います。幼少時(3〜6歳頃)、彼女が何度も借りて読んでいた「ねこのオーランドー」、こちらは擬人的なねこの家族のごく平凡な生活が描かれた本でした。成長とともに借りる本は変わりましたが、彼女が求めているものは決して変わることがありません。日常の家族の生活、安定した群れの関係、そういったものを強く求めています。身につまされる思いです。(2003.02) この本を読んで以降、上野動物園に行くと「ドール」の前でかなりの時間を過ごすようになりました。集団で活発に動き回るドールは見ていて飽きません。以前、2頭が並び、まったく同じ動きでスピーディに森(?)を駆け抜ける様は惚れ惚れしました。手前にある大きな池もただの飾りではなく、木から水に飛び込んだり、水を飲んだりもしています。地味な動物なのでそれほど人気はないのでしょうが、動物園に行くことがあったら、ドールのことも、ちょっと気にとめてみてくださいね。 ↓上野動物園のドール(東京都公式ホームページより) |
実験犬シロのねがい―捨てないで!傷つけないで!殺さないで!
著/井上夕香 絵/葉祥明(ハート出版) |
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「題を見て読みたくないなぁと思ったんだけれど、ううん、読まなくちゃダメだ!! と思って借りてきた。(娘談)」 驚きました。娘は少し前まで、悲しいお話を徹底的に避けていました。『スーホの白い馬(福音館書店)』にしろ、『おおはくちょうのそら(福武書店)』にしろ、とにかく大嫌いで一度読んだら二度と手にしようとはせず、以前学校で読み聞かせがあったときにも耳をふさいでいたと言います。それでも、小5になった今、避けて通ってはいけないと、勇気を持って正面から向き合うまでに成長しました。感慨深いものがあります。 付け加えると、娘は1才までは悲しい話が大好きで、ぽろぽろ涙をこぼしながらも『ぐるんぱのようちえん』を何度も何度も繰り返し読まされました。2才からは悲しいモノ大嫌いになり、大好きだったトトロの本も、メイが迷子になる段落だけは決してページを開けさせてもらえませんでした。 夜、途中まで私が読み聞かせ、日曜日の朝に続きを息子が読んでくれました。読んでいる途中に息子の声は鼻声になり、どんどんもぐりこんで息子の姿は布団にの中に見えなくなりました。声はふるえ、ゆらぎ、くぐもり、それでも最後まで読んでくれました。実は、私は息子がこういった反応を示すとは思っていませんでした。お調子者の息子は冒険や楽しい物語が大好き。ストーリーの理解力に欠けるけれど登場人物達との微妙な感情の変化を楽しむ娘や私とは異なり、息子はストーリーそのもの、おもしろおかしい出来事を単純に楽しみます。しかし登場人物の感情の動きに同調することは少なく、したがって当然のごとく登場人物のもつ感情への理解も浅い。これは、息子の感情がまだそこまで成長していないという年齢の問題だけではなく、根本的な性差の問題で、娘や私とは頭の構造が異なるのではないかと推測していました。 そんな息子にも、シロの死に涙するだけの感性が育っていたことはとても嬉しく思います。しかし、人前で泣くことを潔としないのですね。保育園の卒園式で、上を向いて目を見開き、涙をこらえていた様子を思い出しました。無意識に涙を隠そうとするのは、これもまた弱さを見せることが負けにつながる生物学上の雄の特性なのでしょうか。(2003.3) |
ごめんね、傷ついた鳥たちよ―電車運転士の救助活動
作/井上こみち(ポプラ社) |
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「これ、読みたくないなぁ。写真みたらダメって感じ(息子談)。」走る電車にぶつかって果てる鳥たちを放っておけず、行動に移した運転士の記録です。(2003.3) |
自然保護にまつわるひとりごと