E-イブ(12歳) & R-リック(9歳) & S-say-umi

12月の本棚

今月のSは、過去に読んだ本を読み返すことが多い月でした。Eは相変わらず動物の本、は図書館に行き損ねて同じ本を何度も読み返しています。

鬼の橋 
著/伊藤遊・絵/太田大八 (福音館書店)
 イブが小4の頃に読み、小6になった今再び国語のプリントでこの本の一節が出てきたため家で話題になり、まだ読んでいなかったが借りてきて今月の「ママ読んで」の本となりました。その後、百人一首で坊主めくりをしていた二人が一枚の札を持ち興奮して私のところに駆けつけてきました。参議篁(さんぎたかむら)が流罪になる際に読んだ「わたの原八十島かけてこぎいでぬと人にはつげよあまのつり舟」の句です。そう、『鬼の橋』の主人公である小野篁(おののたかむら)は実存の人物でした。本の中でごく身近に感じていた少年篁がその後流罪となり、さらに百人一首に句を残すほどの大人に成長し、人生を終えていったことは、私達にとって大いなる励ましともなりました。あの世とこの世とを自在に行き来したという伝説を基に書かれている『鬼の橋』は、私達家族に過去と現在と未来とを壮大に行き来させてくれた本です。

グリーン・ノウの子どもたち グリーン・ノウの煙突 グリーン・ノウの川S
著/ルーシー・M・ボストン・訳/亀井俊介 (評論社)
 毎年クリスマスが近づくと必ず借りてくる『グリーン・ノウの子どもたち』は、グリーン・ノウシリーズの第一話です。主人公であるトーリーは、1話、2話で登場しますが、話の内容はどちらもトーリーを中心に語られているものの、トーリー自身が活躍するというよりは、トーリーを写し鏡として、トーリーの感じとる力によって生きるノウの人々(過去にノウで暮らした子どもたち)が活躍します。そして、3話ではそもそもトーリー自身が登場しません。そこで、この物語の本当の主人公はトーリーではなく、グリーン・ノウそのものなのだということがわかるのです。古い石造りの建物であるグリーン・ノウは過去に住んでいた人々の息吹をそのまま留めています。ノウにとって、そしてノウに住む人にとって、現在は過去をも含んでいて、現在と過去は同時にただ存在している。そうした生活はなんて深みがあるのでしょう。
 だからこそ、人は歴史のある場所、歴史のある物に惹かれるのかもしれません。そして、新しい場所、歴史のない物が薄っぺらい感じがするのは、同時に存在しうる過去の営みが感じられないからなのでしょう。

Background photo: イブの机の上に飾られたオブジェ(2003.11.2)