E-娘(11歳) & R-息子(8-9歳) & S-say-umi

3月の本棚
今月の本棚は、先月書ききれずにいてまだ家に残っている本からご紹介します。毎月たくさん借りてくるので全部を紹介することはやはり難しいですが、おもしろかった本はなんとしてでもご紹介したいと思います。
 娘は今月も動物ものが多く、さらに数ヶ月前から社会問題に関わる本も多くなりました。
 息子は先月娘が借りてきたなんじゃひなた丸のシリーズに取りかかりました。「私が借りて来た本、いつも息子が次から借りてきてくれるから、私は借りなくてすむのよね。(娘談)」「ズッコケ三人組」にしろ「なんじゃひなた丸」にしろ、始めに借りてきたのは娘でしたが、今はもっぱら息子が借りています。
 さて、今月は晴れて息子が9才の誕生日を迎えました。なんじゃひなた丸に夢中の息子へ、私からのプレゼントは『忍者図鑑』黒井宏光著(ブロンズ新社)です。これが面白くてね。プレゼントしたはいいけれど、包みを開けたとたんに娘と3人で取り合いになりました。(実は私が欲しかった!?)もちろん最初に読む権利を主張したのは息子です。
▼「ケーキを食べるのも忘れて忍者図鑑に夢中」の図

メイベルおばあちゃんの小さかったころ 選者E
文/アリータ・リチャードソン 訳/中村妙子 絵/ドーラ・レーダー(朔北社)
「今日ね、ママこの本を持って行くんじゃなかったって、すごく後悔しちゃった。(say-umi)」「どうして?()」「電車の中でおかしくて吹き出しちゃったの。笑いが止まらなくて苦しくて苦しくて...。それでもおもしろいから先読みたいしでもう大変だったのよ。(say-umi)」
 この本はアメリカの開拓時代に少女だったおばあちゃんが、孫に語って聞かせた物語です。なんて生き生きと語っているのでしょう。私は自分の子どもの頃の体験、それに伴う感情の細やかな動きのことをこれほどまでに覚えていない。それは、私の子ども時代の体験が貧しいせいだろうか。それとも、私の年齢のせいだろうか。私がおばあさんになったなら、自分の孫に語って聞かせるだけの幼い日の体験を思い出せるようになるのだろうか。

保育園のすきな子ザルのモンちゃん 選者E
文/坂井ひろ子 絵/かみやしん (偕成社)
 野生動物が人の生活に近づくとどうなるのか、園に迷い込んできたモンちゃんをきっかけに、主人公の保育園の園長さんは多くのことを考えさせられました。モンちゃんと出会ったことで、園長さんも、こども達も、そしてこの本の読者も、みんなが大切な何かを知ることになるでしょう。

ホビットの冒険(上・下) 選者E
作/J.R.R.トールキン 絵/寺島竜一 訳/瀬田貞二(岩波書店)
 先月に引き続き今度は息子が借りています。なんと、ロードオブザリングのCMを見て知っている息子は、その前の物語だと聞いてすぐに飛びつきました。難しいのでは? と思ったものの、すぐに物語に引き込まれ、一気に読み終えました。次は指輪物語を読むんだと息巻いていますが、それはちょっと難しいんじゃないかしら...。
 訂正です。借りたのは
でした。息子はすでに先月私が借りたときに読んでしまったとのこと。うーむ、早い!

実験犬シロのねがい -傷つけないで! 殺さないで!- 選者E
著/井上夕香  絵/葉祥明(ハート出版)
 「題を見て読みたくないなぁと思ったんだけれど、ううん、読まなくちゃダメだ!! と思って借りてきた。(談)」
 驚きました。娘は少し前まで、悲しいお話を徹底的に避けていました。『スーホの白い馬(福音館書店)』にしろ、『おおはくちょうのそら(福武書店)』にしろ、とにかく大嫌いで一度読んだら二度と手にしようとはせず、以前学校で読み聞かせがあったときにも耳をふさいでいたと言います。それでも、小5になった今、避けて通ってはいけないと、勇気を持って正面から向き合うまでに成長しました。感慨深いものがあります。
 付け加えると、娘は1才までは悲しい話が大好きで、ぽろぽろ涙をこぼしながらも『ぐるんぱのようちえん』を何度も何度も繰り返し読まされました。2才からは悲しいモノ大嫌いになり、大好きだったトトロの本も、メイが迷子になる段落だけは決してページを開けさせてもらえませんでした。

 夜、途中まで私が読み聞かせ、日曜日の朝に続きを
息子が読んでくれました。読んでいる途中に息子の声は鼻声になり、どんどんもぐりこんで息子の姿は布団にの中に見えなくなりました。声はふるえ、ゆらぎ、くぐもり、それでも最後まで読んでくれました。実は、私は息子がこういった反応を示すとは思っていませんでした。お調子者の息子は冒険や楽しい物語が大好き。ストーリーの理解力に欠けるけれど登場人物達との微妙な感情の変化を楽しむや私とは異なり、息子はストーリーそのもの、おもしろおかしい出来事を単純に楽しみます。しかし登場人物の感情の動きに同調することは少なく、したがって当然のごとく登場人物のもつ感情への理解も浅い。これは、息子の感情がまだそこまで成長していないという年齢の問題だけではなく、根本的な性差の問題で、や私とは頭の構造が異なるのではないかと推測していました。
 そんな
息子にも、シロの死に涙するだけの感性が育っていたことはとても嬉しく思います。しかし、人前で泣くことを潔としないのですね。保育園の卒園式で、上を向いて目を見開き、涙をこらえていた様子を思い出しました。無意識に涙を隠そうとするのは、これもまた弱さを見せることが負けにつながる生物学上の雄の特性でしょうか。

南総里見八犬伝1 妖刀村雨丸 選者S
原作/滝沢馬琴 編著/浜たかや 画/山本タカト(偕成社)
 生協のチラシにこの本が掲載されており、有名なお話なのに内容をきちんとは知らないことに思い当たり借りてきました。どうやら人気があるようで、2巻3巻は貸し出し中。内容はかなり不気味で、首が飛んだり血しぶきがあがったりしますが、最近の安易な本にありがちな惨たらしい場面を書くのを目的として書いてあるわけではなく、意味あって飛ぶわけですから、読んでいて不快感はありませんでした。ただ、私が手を付ける前に息子が一気に読み終えており、しかも一切感想を言わないので少々不安。せめて10才くらいになってから出会って欲しかったように思います。一方は、絵を見ただけで触れようともしません。
 早く続きが読みたいのですが、果たして図書館にあるでしょうか。

 ガンバとカワウソの冒険 選者S
作/斎藤惇夫 画/藪内正幸 (岩波書店)
 これは面白いからと思って借りてきたところ、娘は『冒険者たち』をすでに読んでいて、ガンバとは馴染みの友でした。今回は息子がすっかり虜になっています。

 きゅうりの下であいましょう 選者E
作/リリアン・ムーア 絵/本庄ひさ子
訳/岡本浜江 (ほるぷ出版)
 1月に借りていた『アマンダ、勇気をだして!』の前作です。

ごめんね、傷ついた鳥たちよ
電車運転士の救助活動
 選者E
作/井上こみち(ポプラ社)
 「これ、読みたくないなぁ。写真みたらダメって感じ(息子談)。」走る電車にぶつかって果てる鳥たちを放っておけず、行動に移した運転士の記録です。

犬はすてきな友だち 選者E
作/井上こみち(実業之日本社)
 

犬の消えた日 選者E
作/井上こみち 画/頓田室子(金の星社)
 

海をわたった盲導犬ロディ 選者E
作/井上こみち え/小坂茂(理論社)
 

リンゴのすきなアーサー
北海道の盲導犬たち
 選者E
作/井上こみち(実業之日本社)
 

すばらしい犬たち 選者E
作/井上こみち(実業之日本社)
 全国の犬たちのささやかな活躍ぶりを短編で紹介しています。

勾玉伝説
神かくし事件のなぞ
 選者E
作/加藤純子 画/森友典子(岩波書店)
 10才の女の子が主人公の神かくし事件という設定は、前の年にヒットした『千と千尋の神かくし』にそっくりです。神楽堂にある翁の面は、『千と千尋...』に出てくる河の神様の顔にそっくりですし、個々のキャラクターも宮崎アニメに登場しそうなものが多いのです。
 母を亡くして間もない一人の少女が異界に引きづり込まれ、そこで起きた神かくし事件の謎を人々と協力して解くうちに、自分自身の力を知り、自信を取り戻してこの世に戻ってくるこの物語は、ファンタジーの基本を正確になぞらえています。父方の玉造家に代々伝わる勾玉と、母方に伝わる鏡を引き継いだ娘のさかきという設定はいかにもできすぎで少女漫画風だけれど、10代前半の少女達は、そういった話にワクワクさせられるに違いありません。

ナディヤと灰色おおかみ 選者E
作/松居友 絵/ふりやかよこ(女子パウロ会)