2008年9月9日(火)  福田の夏、サルコジの夏

かみさんと話をしていて黙り込んだ。福田、安倍、小泉とさかのぼり、その前の首相の名が思い出せない。

物忘れは確かにひどくなっているが、認知症になるのはまだ早い。しかし考えても考えても出てこない。それだけ影の薄い人間だったのだろう。小渕か、森か、橋本じゃないかと言いつつ、誰だかわからなかった。結局、そんなことはどうでもいいという結論になった。この国の総理大臣なんて、その程度のものだ。
国民がこの有様だから仕方がないけれど、普通の外国人は日本の首相の名前などまったく知らない。顔も知らない。日本人は主要国のトップの名前や顔をかなり知っているというのに。
インパクトを与えるような仕事をすれば誰だって覚えてくれる。しかし日本人でも首相がどんな仕事をしたかを覚えている人がいるだろうか。国内だけでなく、国際舞台ではまったく通用しない透明人間のような存在だから、外国人に知られないのは当たり前だ。その上、こんなにコロコロと変わっては覚えられるわけがない。

平成も20年になり、その間に就任した首相は12名を数える。小泉は5年半と長かったが、他の首相の平均は1年3ヶ月だという。これでは満足に仕事が出来るはずがない。12名がコロコロと変わる間、主要国のトップはどこの国でも長期政権を保つ。
アメリカはレーガン、ブッシュ、クリントン、ブッシュ。
ロシアはゴルバチョフ、エリツィン、プーチン、メドベージェフ。
イギリスはサッチャー、メージャー、ブレア、ブラウン。
フランスはミッテラン、シラク、サルコジ。
ドイツはコール、シュレーダー、メルケル。
これが各国の20年間のトップたちだ。自分の国の首相よりも覚えやすい。

経済は一流、政治は三流。
日本は外国からそう言われ続けた。しかし今、経済は二流に向かって下降を続け、政治は完全に四流に成り下がった。
平成になるとアホな首相が目立つようになり、最近ではフヌケ首相が福田、安倍と二代続いた。二人とも世襲議員である。小泉もそうだった。こんなに世襲議員の多い国はない。次に自民党を背負いそうな勢いの麻生は、終戦後のワンマン首相・吉田茂の孫である。福岡の大会社を経営する大金持ちでボンボン育ちだ。
ポピュリズムは政治を狂わせる。しかし庶民のことを考えない政治はあり得ない。国民の目線に立てず、国際感覚も欠如したこんな人間たちに国を任せたいとは思わない。

この夏は様々なことがありすぎて、頭が混乱した。北京オリンピックもその一因だった。開会式はまさに騒乱だった。やり過ぎだ。
貴賓席の我が福田首相は席に着いたまま、シラケて日本選手団を見送った。それはそうだろう。選手たちに「せいぜい頑張ってください」と言った人だ。各国首脳のなかにフランスのサルコジ大統領の顔もあった。彼は立ち上がって自国選手を鼓舞していた。
数日後、サルコジはロシアにいた。北京のお祭り騒ぎと時を同じくしてロシアがグルジアに侵攻し、人殺しが始まっていた。サルコジはその侵略終結に向けて動いたのだ。メドベージェフ大統領と会談し、グルジアからのロシア軍の撤退を約束させた。もちろん人道上の問題だけでなく、欧米とロシアの対立(中央アジアの石油資源、欧州に供給する天然ガスのパイプラインを巡る攻防)や、独立紛争という複雑な背景があるのだけれど、グルジアで民間人が殺されているのは紛れもない事実だった。

今日の朝刊の一面は、相撲界の大麻事件が大きく報じられていたが、一番下に「露、撤退に合意」と小さな見出しがあった。それも相撲の記事かと一瞬思った。大麻を吸ったロシア人力士を大相撲から追放する記事かと思ったのだ。しかしそうではなかった。サルコジがEU代表団とともに再びモスクワを訪ね、まだ居座っているロシア軍の撤退を実行させることに合意したという内容だった。
サルコジが好きなわけではない。しかし、彼の政治家としての手腕は並々ならぬものがある。力を発揮すべきツボを心得ている。ドイツの女首相メルケルも動いていた。米国もロシアに圧力をかけた。世界がロシアのグルジア軍事進攻を憂い行動する中で、日本の首相は自分のケツをふいただけである。

ちなみにサルコジの奥方は中国を袖にして北京には行かず、オリンピック終了後にパリでの仏教行事に参加して、ダライ・ラマ13世と会っていた。なかなかの政治力と行動力だ。美貌とゴシップだけでは世界に通用しないことを知っている。
恐るべし、フランス。



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