2008年7月28日(月)  サルコジ、そして、とりとめのない考え

「日本より中国の方が好きだ。香港は魅惑的だが、東京は息が詰まる。京都は陰気。相撲は知的なスポーツではない…」

今朝の朝刊の記事だ。最近のニュースではなく、04年1月17日の毎日新聞夕刊に載った記事が再度掲載されたものだから、以前に読んだ人もいるだろう。少しムッとしたが、人が何かについてどう思うかは自由だから憤慨しても仕方がない。また、確かに香港は魅惑的だとぼくも思う。

これは現フランス大統領サルコジが内務大臣だったころの発言だ。よくぞここまで本音を言ったものだと感心する。世界各国の首脳はサルコジと同じことを思っていても、こんな発言を公的にすることは絶対にない。だからぼくは当時サルコジに感心したものだ。発言の内容はともかく、何かをやりそうなおもしろい男だと。
ところが日本の駐仏大使がサルコジに抗議すると、あわてたサルコジは大使を公邸に招き、食事を振る舞って釈明に努めたらしい。ガッカリした。釈明をするくらいなら当初から発言を控えるべきで、まるで子供の行動だ。これでは猿知恵にも劣る猿固辞ではないか。
サルコジの強烈な発言は、当時の大統領シラクとサルコジの仲が悪かったことに起因している。シラクはフランスの歴代大統領のなかで類を見ないほどの親日家だった。相撲が大好きだったし、京都にもよく足を運んだ。つまりサルコジはシラクへの当てつけであのような発言をしたのだ。ダシにされた日本はたまったものではない。
(何かやりそうなサルコジは、やっぱりやってくれた。奥さんと離婚し、元モデルの金持ち美人と結婚した。サルコジよりもこの奥さんが何倍もおもしろい。ファースト・レディになったとたんにどこからか全裸写真が出てきて、オークションで高額落札されたニュースは世界を駆けめぐった。それよりも驚いたのは、以前にある男とつき合っていたが、その男に飽きて、次にその男の父親とつき合ったという話。親子ふたりと肉体関係にあったらしい。山本モナも影が薄い。)

ともあれ、世界が日本を見る目はサルコジと変わらないと思った方がいい。表面では社交辞令を重ねていても、これが本性だ。文化の独自性や家電製品の優秀さを認めても、日本は決して世界から尊敬などされていない。それどころか、どちらかといえば見下され、わけのわからない国だと思われている。
個人的なつき合いでは外国人から尊敬され、認められることはあっても、国としての日本はそんなものなのだ。
(そういうなかで、トルコは珍しい国である。日本や日本人にとても好意的だ。日露戦争で日本がロシアに勝利したからだ。当時ロシアの南下政策に苦しめられていたトルコは、自分たちの敵国ロシアを破った東洋の弱小国に目を見張ったのだ。以来日本は賞賛され、それが103年後の現在まで続いている。日露戦争の勝利を決定づけた日本海海戦で指揮を執った、大日本帝国海軍の東郷大将から名前をとった東郷ビールというものさえある。こんな国はトルコだけだ。)

「アメリカの属国」
世界が日本を観る目はそんなところだ。イギリスも似た立場だが、日本と違うのはアメリカに対して発言することだ。フランスも、ドイツもアメリカに対等にものを言う。この二国はイラク戦争に反対し、アメリカに同調しなかった。アメリカの顔色ばかりををうかがう日本とはまったく違う。
アジアでナンバーワンの位置を中国に奪われるのは時間の問題だ。中国は大国への階段を着実に上っている。そういうことに政治と経済はとても敏感で、アジア外交の主役は既に中国に移っている。それは各国の駐在大使を見ればすぐにわかる。日本よりも中国に大物大使を派遣しているのだ。オーストラリアの現首相などは就任直後に中国を訪ねたが日本には来なかった。黄昏の国、日本である。
北京オリンピックと上海万博のあと、中国経済は失速すると見られている。現に株や住宅は暴落し、中国が世界恐慌の引き金を引く恐れさえある。しかしそうであっても、これから当分は中国の時代になることは明白だ。そしてインド、ブラジル、ロシアなどが着々とその後を追っている。

日本という国には大きなビジョンがないと思う。日本は何をどうしたいのか。大局に立った理念が乏しく、ちまちまと対処療法的な目先の行動ばかりに走っている。しかもコロコロと方向が変わる。(それは政治だけに限らず、個人のレベルも似たようなものだ。一本筋の通った理念に欠けている。)
例えば地方は人口が目に見えて減少し、空き家が目だつ。日本を日本たらしめ、日本を支えてきた地方が、ただただ壊れていく。極度の人口集中になれば都市部も崩壊を始める。地方が壊れれば、当然都市部も同じ運命をたどるだろう。共にあっての国である。先日のサミット参加国で日本ほど地方に活力がない国はない。ドイツもフランスもイギリスもアメリカも農業に力を入れている。農業の崩壊が国の崩壊に繋がることを知っている。

サルコジが大統領に選ばれる国フランスと、二世議員が次々と総理大臣になる日本との差を痛感する。
親がハンガリーからの移民であるサルコジのような人間が、国のトップになることは日本ではあり得ない。アメリカでは黒人や女性が大統領になろうかという時代に、日本はいつも置いてけぼりのマヌケな国である。しかし借り物のようなグローバリゼーションだけは動いている。小泉総理と竹中コンビの尻馬に乗ってから、日本はどんどん変な方向に進んだ。国民の多くが喝采した小泉改革とやらの結果を、今こそみんな検証すべきだ。地方の崩壊。金持ちや企業のための政治。この現実を見れば、誰だって小泉の失政を確認できるはずだ。
政治家や経済の専門家たちが呪文のように唱えるグローバリゼーションが、そんな事態しかもたらさないとしたら、世の中がグローバルにならない方がいい。垣根のない世界、単一化、均一化の方向に舵を切った政治。人はそんな金太郎飴のような世界など求めていない。しかも現実は本来のグローバル化とはほど遠く、あだ花としての貧富という格差だけが広がっている。

時代と共に社会は変わるものだが、変わり方が急激すぎる。
100円ショップでの買物を控えよう。スーパーで買っていたものを、できるだけ地元商店街の八百屋や魚屋で買おう。安ければ良いという考えを少しだけ見直してほしい。駅前やアーケード街の昔ながらの商店が瀕死の状態だ。一度なくなれば商店は復活しない。
みんな地方へ行こう。帰省してお金を使おう。真似事でいいから百姓仕事をしてみよう。見知らぬ爺ちゃん婆ちゃんと話をしてみよう。
ぼくたちに今すぐ出来るのは、せいぜいこんなことだけれど、やってみる価値はある。



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