残   像



ああ 空耳か


振り向いたベンチには
ただ光だけが遊んで


そうだったね


あそこで
君はいつも
軽やかな笑い声を


まるで音楽のように


時が
風の路をさかのぼり


僕はひととき
思い出にたゆたう


淡い緑のさざめき
君の笑顔の隣り



ちりちりと


まぶたの奥が
ゆるやかに軋みだす


巻き戻すことのできない
あのやさしい日々


ひたと風が止まり
時はゆっくりと
今に立ちかえる


まぶしすぎるよ


光を湛えたそのベンチ
今の僕には


座ることができない



(写真 アルカディアさん)
PHOTO GALLERY ARCADIA