地平線の薔薇



それは
光が落ちる寸前の
一瞬の魔法


まるで
地平線に咲いた
数知れない花々が
いっせいに燃え出したように


目を奪う
薔薇色の広がり


ああ
空が恋している


頬染める陶酔
愛しさは炎となり


燃え上がり
燃え盛り


なんてあでやかな
天衣無縫な恋なのだろう


何はばかることなく
ときめきをさらけ出し


満ち溢れる想いが
えもいわれぬ色彩となる


誰もが魅入られ
熱く息を呑むひととき


解き放したこころに
やさしい面影を描いては


しばし
足を手を止める


同じ輝きに
結ばれることを願って


西空に咲き誇った
薔薇たちは


やがて


ためらいがちに広がる
薄紫のとばりに
包まれて行くだろう


けれど
炎は
消えるのではない


しなやかな闇の手に
絡め取られ
より深くひめられて


幾千もの
光の粒に
姿を変えるだけ


宇宙の彼方まで
駆け抜ける想い


ああ
わたしも


あの空のように
恋してみたい