夢  凪



それは
とても
静かな海でした


ゆったりとした
淡緑の水の広がり


かすかに
息づくような
波のよせ返し


湿った砂の上に
佇んで


さっきからずっと
飽かずに
眺めています


水平線をよぎる
船影の
なんて微々たる動き


時を運ぶ風は
どこへ行ったのか


きらきらと


光のうろこが
海面に踊るたび


あなたは
小さく
感嘆をもらすのです


ああ
きれいだ と


わたしは
ただ黙って頷くだけ


あなたの声は
低くおだやかに
空気にとけ


まるで
ひとりごとのようだから


わたしの言葉は
波立つ想いを孕んで


うっかりと


あなたを
振り向かせて
しまいそうだから


どうか
そのまま


目の前の美しい様を
みつめていて下さい


わたしは
こころの両手を
そっとひろげて


あなたの
うしろ姿ごと


この静かな海を
包み込んでいたいのです




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