椿



そんなにも
鮮やかに咲きながら
あなたは


はらり ほほえんで
あっけなく


こぼれおちてしまいそうだから


風の合間 息をつめ
まなざしで繋ぎとめようか


枝先で褪せた姿をさらすより
美しい骸になることを選ぶ花


静寂の中
かすかにうつむいて


みつめないで


そんなに気遣わしげに
みつめないで と


つぶやきもらす
唇のよう


どうか今の姿だけ
覚えていて下さい


寒さの残る陽射しを受けて
せいいっぱい咲いている


その様を
いとおしいと思って下さい


いつかその日が来たなら


つとこの手を離し
迷うまもなく
ひとすじに飛び降りて


ほとり


わたしは潔く
動かぬ紅となるのです


(写真 PIPOさん)
(BGM by 涼)