佇む時

木陰に佇んでいたら
気の早い風に出会った

季節の背中を押しながら
迷うことなく駆けて行く

風に吹かれて佇んだら
秋の匂いに包まれた

まるで思い出のオルゴールを
そっと開いたみたい
きゅんとなつかしさが鳴る

秋を吸い込んで佇んだら
コスモスが揺れていた

こんな道端にも
しっかりと根づいている
かよわいだけじゃ
きっと生きられない

コスモスとともに佇んでいたら
夕焼けが広がった

なぜそんなに美しいの？
人々が
せつない思いでみつめるから

夕焼けに染まって佇んだら
一番星が光を投げた

最初に心惹かれたものを
信じてしまう私
いつもの癖

一番星を見上げて佇んだら
夜の闇が降りてきた

もうお帰り
星がささやく

夜は夢を見るものだよ
さあ
枕に願い事をして

夜の闇は
夢の入り口へ
わたしを導いてくれる

まぶたを閉じて
こころをゆっくり解き放して

そう
きっとこの小路
不思議なほどの確信

夢の小路に
ぽつり佇んだら

隣りに佇む
あなたをみつけた

逢えるんじゃないかと
思っていたよ
ええ私も

ねえよく顔を見せて
おぼろげなほほえみ

鼓動だけは波打つけれど
指先は霧に沈んで

ぬくもりを
かすめて行く

これは夢

逢いたいと
願う気持ちが映し出す
水鏡のゆらめき

目覚めれば消えて行く
うたかたのまぼろし

それでもいいの

逢えたなら
ただそれだけで

暁を呼ぶ
金の星よ

どうか
時を告げないで

もうしばらく

薄闇のとばりを
閉ざしていて

こうして
ふたり佇む時を
ずっと待っていたのだから