映画『英雄(HERO)』より

清雨の壮士

〜 長空 〜


人は何ゆえに
こころを燃やすのだろう


正義を守るため
理想を追うため


人は何ゆえに
いのちを賭けるのだろう


信念を通すため
天下を正すため


ひとりの力では
叶わぬことも


同志が共に目指せば
そこに道が開ける



目の前に立ちはだかる
一人の男


まだ鞘に納まったままの
剣にこめられた
静謐なる気合


一触即発
輝きが放たれた瞬間


雨の匂いも
琴の調べも
張り詰めた空気も


何もかもを
見事に切り裂くであろう
その一閃に


わたしは
己が存在のすべてを預けよう


盤の上の碁石の軌道を
最後の詰めまで
読み取るように


互いの脳裏に
すでに戦いは描かれている


一歩


そして
次の一歩を


さあ
どう出る?


絶え間ない雨が
欄干に落ちる
雫がまぶたを伝う


激しくかき鳴らされる
琴の音色
ぷつり、と
絃が切れる


時の歯車
が鎮まり
止まる


震え出す空気
力強く雨を蹴る音


抜き放った剣から
光が弾かれる


止めた槍に食い込む
凄烈な手応え


それでいい


容赦なく
必殺の剣を繰り出せ


たとえ
この槍が折れ
わたしが倒れても


揺るがぬ志しは
おまえの剣が受け継ぐだろう


まっすぐに進め


それこそが
わたしがおまえに託した道


風吹き荒れるこの大地に
たとえひとり佇もうとも


おまえは
きっといつか
目指す場所へ辿り着く


わたしの
同志たちの
思いが終結する場所へ


そのためならば・・・


悔いなど
残さぬ



いざ!






この詩に関しての説明はこちら↓
ネタばれありですが(^^;



長空のイメージで、よもぎさんがイラストを
描いて下さいました。こちらから