聖 夜



誰もしらない深い森の
一番高いもみの木に
今年も天使が降りてくる


たったひとり
白い羽をふるわせて


風の止まったビロードの空
冬の星座の間を縫って


ここは
しんと寂しい闇の森
しんと佇む無骨なもみの木


「どうして街へ行かないのかい?」


まぶしすぎて
光の洪水に
溺れてしまいそうだから


「ここにはなにもないだろうに」


でも
もみの木があって
空には星が瞬いていて
私は祈りの歌が歌えるわ


それだけで
とてもすてきなクリスマス


もみの木の枝に
ちょこんと腰かけ
天使は小さく歌い出す


聖なる夜の
聖なる調べ


空が涙をこぼしたか
流れ落ちた星ひとつ


「祈りは届きそうかな?」


もう届いているの


だって今年も こうして
あなたに会えたから


きらきらした飾りも
にぎやかな音楽も
なくていい


大切なものに
目印なんていらない
まっすぐ心が目指すから


夜より静かな
星よりきれいな
その笑顔


誰も知らない深い森
一番高いもみの木に


今年も
一番幸せな
天使が舞い下りた








BGM『荒野のはてに』