清歌(SEIKA)



なにも言わない
あなたのまなざしが
そこにあって


わたしは


泣きたいほどの思いを
抱えていたとしても


言葉には
出さないけれど


ひとりじっと
噛みしめているけれど


それでも


澄んだ空や
やわらかい風や
けなげな緑を見上げながら


いつだって


あなたの存在を
感じているのです


ほのかに
支えられているのです


その微笑みが
こころの奥の
小さな泉に映ると


ふいに切なく
波紋が広がって


さわさわ
揺らめいて


強がりも気負いも
はらはらと
崩れそうになる


迷子のように
頼りなくなる


そんな時
たぶん


わたしは
立ち止まり


ひっそりと
泣いてしまうかもしれない


暖かく透明な光


あなたがさりげなく
投げかける光の中で


ちっぽけな自分に
気づいて
嘆いて
向かい合って
  

いつしか
許すことを覚える


羽ばたくための力は
どんなにささやかでも
自分しか生み出せないから


わたしはうなずいて
また歩を進める


ゆっくりと
次の一歩を踏みしめる


そして


あなたは
静かなまなざしのまま


ありがとう


いつも
そこにいてくれるのですね


(イラスト あみさん)
「ハートランド」