彩  流



さまざまな色
さまざまな形


光を屈折させ
煌くもの


あるいは呑み込んで
翳となすもの


透明なベールに
包まれながら


なんてたくさんの欠片たちが
ここに
息をひそめているのだろう


たえまなく洗われ
少しずつ
丸く穏やかに


内なる色彩は
ますます
鮮やかに磨かれ


さながら貴石のごとく
そこに存在しつづける


その美しいものたちの
間を縫って


わたしは滑り行く
ただひたすらに


かすかな余韻を
水面に響かせては


動かぬものたちの
ひんやりした感触を


声なき声を
とろりと両手でなぞって行く


すべての色を映しつつ
どの色にも染まることなく


あらゆる姿に変わりつつ
どんな姿にも執着せず


ただ清々と
めぐり来る時に任せて


わたしは滑り行く


この先にあるかもしれない
河口へ
淵へ
あるいは澱みへ


辿りつくことすら
さだかではないけれど


次々に様変わりする
足元の風景を
いとおしみながら


淡々と
先を目指そう


とどまるものと
去り行くもの


どちらも
ただあるがままに
時を重ねるだけならば


さらさらと
あえかな歌に導かれて


走り続けよう


引っ張られるでもなく
押されるでもなく


自らの生み出す
心地よい速さで


前へ進もう


とどまる光と翳に
ほんの少し
後ろ髪を引かれながら


せめてひととき
この美しいものたちの色を借り


彩かなる流れとなりながら



(写真 アルカディアさん)