
桜花爛漫
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― 清少納言より定子中宮へ ―
晴れやかな陽射し受け
今まさに
盛りと咲く桜のごとく
見目麗しきかの姫君こそ
今上帝のただおひとかたの后なり
匂い立つ白桃の頬は
薄紅の花びらより淡く
艶やかな黒髪は
幾重にも重ねられた衣の背に
ゆるやかに流れ落つ
そのまなざしは
明るく聡く
春の野辺を彩る
きわやかな光にも似て
あどけないほど
笑みこぼれる御様は
透き通った珠が
ころころと
きらめき転がるよう
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まこと
天の恵みを一身に
お受けなさった中宮に
お仕えするめでたさよ
くゆる空薫き(そらだき)もの
螺鈿(らでん)の唐櫃(からびつ)
瑠璃(るり)の壷
かすかに揺れる御簾
趣向凝らしたる扇に
ほどよく隔てられてさざめくは
清らかな直衣(のうし)姿の公達と
色とりどりの重ねの衣の女房たち
花見ては歌を詠み
月見ては文を遣わす
清澄なる笛は風に遊び
闇にひそむ鬼さえも
声なく聞き入らんとす
雅びなること
天上の月の都も
さもあろうかと思われんほど
華やぎたる内裏の中にても
ひときわ輝ける明けの星は
お若き中宮なり
お言葉を交わす楽しさ
「中納言」とうちとけて
お呼びくださる時の
なんと晴れがましきこと
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心ときめかす様々なるもの
気高きもの かわいらしきもの
切なきもの
そして厭わしきものまでも
この草子に書き綴り
後の世にまで残さんとするは
共にもののあはれを興じ
胸のうちなる思いを解して下さる
中宮あらばこそなり
願わくば
今 その御身に降り注ぐ
春のごとき栄華の光
永久(とこしえ)にながらえんことを
桜の花より匂いやかなる
美しき御顔を
畏れ多くも仰ぎ見ては
心より祈るばかりなり

※ この詩は、平安時代一条天皇の中宮定子に
仕えた清少納言をイメージして作りました。
清少納言、中宮定子の人物所見はこちら ![]()
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