〜 平安編 〜


名前をクリックすると、それぞれの詩のタイトルに戻ります。

  陰陽師  
《あべのせいめい》
平安中期を代表する陰陽師。その生涯や伝説は謎に満ちている。

今の陰陽師ブームのまさに火付け役。白狐の葛の葉が母親、子供の頃に師匠である賀茂忠行のお供をしていて百鬼夜行を見る、式神を自在に操る・・・
等々不思議なエピソードには事欠かない。奥さんが式神を怖れたため、邸近くの一条戻り橋のたもとに置いておいたというのは、ちょっとほほえましい。
魑魅魍魎が跋扈していたと言う時代そのものが、謎を生んでいるのかもしれませんね。
《みなもとのひろまさ》
醍醐天皇の皇子の兵部卿克明親王の第皇子。

夢枕獏さんの小説の中で、晴明の親友として描かれる博雅は、もちろん実在の人物。ただし晴明との係わりについては夢枕さんのフィクションだそうです。音楽を好み、琴、笛、琵琶、篳篥などの演奏は妙を極めていたとか。小説でも登場する博雅の音楽にまつわるエピソードも実際に伝わっている逸話です。
小説では、ほのぼのとした人柄で孤独な晴明の心を癒す唯一無二の親友となります。
《りか》
安倍晴明の奥様。

安倍晴明の奥方については、あまり書かれているのを見かけません。梨花と言う名前についても、数少ないエピソードについても、物語の中でのことだったり、言い伝えだったり、と言う程度らしいのですが。「梨花」と言う名前が、とても美しく響きも素敵なので、私はいつもこの名を使ってしまっています(^^;
晴明の操る式神(十二神将らしいです)の容貌が醜く、奥様が恐れたために、一条戻り橋に隠したと言うエピソードは、晴明の愛妻家ぶりを思わせますね。
《みつむし》
安倍晴明に仕える式神。藤の樹の精。

夢枕獏さんの小説『陰陽師』の中で、晴明に仕えている美しい女性。
晴明が「蜜虫」と名をつけた藤の樹の精で、いつもひそやかに晴明の身の回りの世話をしています。式神と言うと、恐ろしい姿のものや奇妙な生き物というイメージなのですが、晴明はどうやら花や絵からも式神を作れるらしい、しかも美しい女性として。やはり元は花なのだから、散る時期が来ると自然消滅してしまうのかしら。
《しらびくに》
不老不死の女性。

人魚の肉を食べたため、不老不死となったと言う伝説の女性。夢枕さんの小説では、30年に一度、身体の中にたまった禍蛇を晴明に落としてもらいに来ます。雪の中をほとほと歩いて晴明のもとへ現れる黒い僧衣の女・・・ それはなんとも哀しい姿に思えます。
映画「陰陽師」の中では、小泉今日子さん演ずる青音と言う女性が、この白比丘尼をモデルにしていましたね。竹林の中から登場するシーンが印象的だったもので、そのイメージを詩にいただきました。
    源氏物語 
《わかむらさき》
源氏の君が病気療養のため訪れた北山で出会う少女。後の紫の上。

源氏の憧れの女性、藤壺の宮に面差が似ていることで、源氏は心惹かれるのですが、実際に藤壺の姪にあたる少女なので、似ているのも道理ですね。
幼い時に母を亡くし、しかも父には正式に認められていない境遇。祖母の尼と二人北山に住んでいたところを、源氏に見初められたのは彼女の幸せの始まりと言えるのでしょうか?
理想の女性とされる紫の上の可憐な少女時代です。
《あさがおのさいいん》
式部卿の宮の姫君。加茂の斎院となる。

源氏の君と長い間手紙を取り交わしていたと言う姫君。朝顔の花を手紙につけて送ってから、源氏は「朝顔」の姫と呼んでいた。特筆すべきは、どんなに源氏に言い寄られてもついに男女の仲にはならず、微妙な親友のような関係を保った点。加茂の斎院に立たれ、その後斎院をおりてからも、源氏を拒み続けたのは、それが彼女なりの信念に満ちた愛し方だったのでしょう。
《おぼろづきよ》
源氏の政敵である右大臣家の娘。宮中での桜の宴の夜に出会う。

宴の後、たまたま戸口が開いていた弘徽殿に忍び込んだところ、歌を口ずさみながら近づいてきたのが朧月夜。すかさず捕らえてしまった源氏でしたが、朧月夜はまもなく東宮(のちの朱雀帝)の妃として御所にあがることになっていたわけですから、これはまさに禁じられた恋。この恋が原因で源氏は須磨へ隠遁せざるを得なくなります。
《ろくじょうのみやすどころ》
亡き東宮の妃。世を避けてひっそりと暮らしている貴婦人。

身分、家柄もよく、教養高く、趣味も洗練された美貌の貴婦人。彼女の邸は彼女を崇拝する貴公子たちのサロンのようだったそうですが、華やかな取り巻きの中にいても、もしかしたら彼女は孤独だったのかも。彼女に興味を持った年下の源氏の君の猛然たる求愛にいつしか溺れ、気がつけば、源氏の君の周りにいる女性に嫉妬し、その激しさのあまり生き霊にまでなってしまう、女の哀しさ。
《うつせみ》
紀伊の守の父、伊予の介の若い後妻。方違えに来た源氏の君と出会う。

たまたま源氏の君が方違えに訪れた紀伊の守の屋敷にいたのが空蝉。空蝉の身の上に興味を持った源氏の君は、その夜、空蝉の部屋に忍びこみます。身分が低いこと、そして夫を持つ身であることから、かたくなに拒もうとする空蝉。それがかえって源氏の思いを掻き立てるのですが、二度目の逢瀬をとげようとした源氏の前に、空蝉は薄衣だけ残して逃げます。源氏に惹かれながらも拒まねばならない哀しさ、つつましい誇りを持った女性です。
《ふじつぼのみや》
桐壺帝の寵愛深き女御。源氏の君の義理の母。

源氏の君が幼い頃に宮中へ迎え入れられた、美しき義理の母。年もそれほど違わず、いつも優しくしてくれる憧れの女性が、亡き母に似ていると言われれば、源氏の君の執着も深くなるはず。藤壺の宮自身はどうだったのでしょう? いつのまにか大人に、しかも並ぶ者がないほど美しい若者に成長した源氏に対する宮の気持ちはいまひとつ読み取れません。が、源氏が無謀な逢瀬を成し遂げてからは、ひたすら罪の深さに怯え、煩悶する。それこそが恋の証し、とも思えますが・・・
《あかしのきみ》
源氏の君が都落ちした際に出会った、明石の入道の娘。

父親の明石の入道は、無位無官の身ではありながら、娘を身分の高い男性に嫁がせたいと言う望みを持っており、そのために明石の君も教養も自尊心も高く育ちます。それは源氏の君にさえ、都の姫君より手強いと思わせたほど。源氏の君の求愛になびかなかった女性は、他にも何人かいます。空蝉は見事源氏の手から逃れ、朝顔の斎院は最後まで源氏の恋人にはならなかった。けれど、明石の君は結局は源氏との恋を選び、それこそが彼女の運命を大きく変えることとなります。
その他 平安人
《せいしょうなごん》
「枕草子」の作者。中宮定子(藤原定子)に仕えた。

平安の才女と言われる清少納言。いわゆる物語や日記が流行った時代に随筆と言う形式の文章を、しかもきらめくばかりの感性でとらえた様々なものを簡潔な言葉で表したと言うことは、人々の注目を集めるに値すると思います。
一条天皇の中宮定子に仕えたと言うことも、彼女の幸運のひとつだったのでしょう。中宮定子の寵遇を得たことも「枕草子」が世に出るようになった大きな要素だったのではないかと思われます。
どうやら結婚も二度ほどしているらしい清少納言ですが、晩年は不遇だったと言われています。
《ふじわらのていし(さだこ)》
平安中期、一条天皇の后。

15歳で入内し、女御、ついで中宮、皇后となる定子。美貌の上に才気あふれ、明るくやさしい性格だったので、天皇との仲も睦まじかったと言われます。さらに文学的才能も豊かだったために、清少納言の才能にも目をとめ、華やいだ文芸サロンが形成されたのでしょう。
幸運を一身に集めたかと思われる定子ですが、父である関白藤原道隆亡き後は、何かと立場が苦しくなってきます。父の弟にあたる藤原道長の娘、彰子が同じ一条天皇の後宮に入内し、さらに寂寥の感が・・・ 3度目の出産後、定子は24年の短い生涯を閉じます。