夏の音



ちりり、と
硝子の触れ合う小さな音が
 
 
足早な陽射しの中
風の訪れを告げる


軒下に硝子の風鈴
それは
巡る季節ごとの習慣だったから


あなたも今頃
仕舞い込んでいた風鈴を
そっと取り出して


なつかしそうに
みつめているかしら


軒下に吊るして
風を待っているかしら


夏の初めの眩い空を
ひとり振り仰ぎながら


気がつけば
また遠いあなたに
思いを馳せてしまう


元気でいる?
仕事は順調?
寂しくなったりしていない?

  
気遣うだけで
何もできないけれど


風よ


ひとときの
涼やかなやすらぎを


透き通った硝子の奏でる
音色と一緒に


どうか
あの人にも届けて


ささやかなわたしの願いを
運んで行って


いい夏が来ますように、と