水音



あなたの手がそっと水を掬う
光を受け入れ光に染まる
なんて清らかな流れ


あなたの指から
きらきら こぼれる光のしずく


こぼれるそばから
くりかえし あなたは水を掬う


その感触の心地よさに
うっすらと微笑みながら


くりかえし あなたは
水を掬う


やさしい手のひらから
くすくす笑いのように
飛び散る水音


水はそんなにも美しく
あなたの指とたわむれる


少しだけ
私は水に嫉妬する


ゆっくりと


時はふたりの間を遠回り
陽射しも ゆるゆる まどろむよう


ふいに


あなたは振り向き
手を差し延べる


くったくなく
笑いながら


たった それだけで
霧散するためらい
他愛ないほどに


あなたの手につつまれて
まぶたに光を受け止める


急速に回転し始める
時の歯車
ときめきと呼応して


ぱしゃぱしゃ、と
足元で焦れるような水音


ほら


今度は
水が私に嫉妬している