ふたりの雨



エンジンを切ったとたん
雨音のカーテンに
閉じ込められてしまった


吐息さえも
ことりと響きそうで


無言のたゆたいが
満ちていく空間


この車は
シェルターのように
どんな嵐からも
わたしたちを
守ってくれるのかしら


取り残されたように
ふたりきり


視界の隅に
お互いの横顔を
感じながら


流れ落ちる
しずくのスクリーン


みつめるほどに
不透明になる


スローモーションで
時を刻む
デジタルの数字


ドアを開けたとたん
この ゆるやかな結界は
破られてしまうから


もう少しこのままで


言葉を忘れたふりを
してみましょう


ふたりを 帰さない
やさしい雨