都忘れ
野辺の花を渡る風は
どこへ帰って行くのだろう
ほどけてしまった絆の糸は
ほろりと風に流されて
この指先すらも離れて行く
忘れない、と
その短い言葉が
どれほどの想いに満ちていても
もうあなたに届くことはない
忘れてほしい
あなたはどうか
果たせなかった約束を悔やむのは
わたしだけでいい
振り返るたび
あなたが哀しむくらいなら
いっそ
思い出すことのないように
ふたり愛した花をすべて
この野辺に集めてしまいたい
あなたの目に触れぬよう
そして
わたしはひとり
あなたの面影を花に映して
胸しめつけるなつかしさに
ゆらり漂いながら
風に吹かれていよう
忘れない
たとえ
時の守人がどれほど囁きかけても
あなたの笑顔を
静かな声を
やさしいまなざしを
こぼした涙を
あなたを愛しく想った日々を
けっして
忘れはしない