迷  宮



その響き
なんてやわらかく耳に触れる


その面影
なんて甘やかに胸にすべりこむ


淡い陽射しの下
私に気付かず歩く
あなたの姿


追わずにはいられない


ゆるやかな風の気配
はしゃぐ足音


ふいに
まなざしがふりかえる


軽い驚きが
うっすらと和みに変わり


ふたりの距離は
たやすく
手繰り寄せられる


それは幸せな呪縛


ささやく
ささやく


子守り歌のやさしさで


ほほえむ
ほほえむ


絹のさやでくるむように


私は
囚われの身


あなたは
ひだまりの迷宮


せつなく煌く
このひと時を呑み込んで



(イラスト 裕樹さん)