銀の穂



かすかな風にも
さやさやと
銀色の穂は波立ちさわぐ


淡き月に映え
星の瞬きに鼓動して


しめやかに
夜になびきだす


たたずむ影と見まごうは
細き月影が醸す幻


銀波をめぐるざわめき
耳元をかすめ


さやさや さやさや


わたしは
さ迷う一艘の小舟


舵もないまま
眠りのごとく流されて


見上げれば
やんわり傾く空


時の守り人も
いずこやら雲隠れ


ならば
このまま ゆるりとな


銀の穂ゆらめく
月下の野に


夢よ
ひととき降り立たん


(絵写真 HAL-KODAさん)