幻   想



はてしなく続く砂の丘
乾いた声が
吸い込まれて行く


呼びかける
なつかしい名


あの人に届く前に
どうか消さないで


風だけが
縦横無尽


まるで
不思議な模様の絨毯を
まばたきの間に
織り上げるよう


我がもの顔に
砂の素肌を撫でては
からからと走り去る


私のつま先は
流れる砂に
埋もれたまま


空をよぎって行く
切なさの影を
なすすべなくみつめて


どれだけの想いを育てたら
やわらかな緑を生み出せるの?


どれだけの涙を注いだら
星を映す泉になるの?


できるなら


蜃気楼ではなく
オアシスになりたい


いつか
あの人がたどり着く
緑あふれる水辺


やわらかく
腕を差しのべ
やすらぎで包みたい


そんな夢に立ち尽くす
小さく微笑んで


鳴り続ける砂
惑わす風


幻を手繰り寄せるように
繰り返し繰り返し


胸に灯す
愛しい面影



(壁紙素材)