幻    蒼
―GENSOU―



一面の青の中から
ひそやかに


細くか弱な
葉が伸びて


すぅっと伸びては
寄り添いて


静かにひと群れ
繁りたる


足元を
水に隠した緑草


さやと揺れては
あえかにたわみ


青のおもてに
さざめき起こす


さわさわさわ、と
風の吐息


ひたひたひた、と
水の波紋


綾とる緑の水草は
なよと絡みて
また離れ


夢のはざ間を巡るやら
時のしずくに濡れるやら


霧かかりたる
記憶の向こう

いつか出会いし湖は


まどろみながら
息づいて


我をやさしく
手招かん


さわさわさわ、と
ひたひたひた、と


かそけき音が
滑り行く


青の片隅
浅き水底


なつかしきかな
かの水辺


(絵写真 HAL-KODAさん)