硝子の月




透明な水の上に
そっと
貝の舟を
浮かべるように


こころの中に
とまどいながら
永遠という言葉を
置いてみた


それは
とりとめもなく
滲んで
ひろがって


わたしの胸に
問いかけだけを
残していく


惹かれるほど
怖くなるのはなぜ?


憧れるほど
遠くなるのはなぜ?


視線を上げれば
痛いほど
薄くはりつめた月


まるで硝子のよう


輝きの向こうは
姿のない永遠?


音もたてず


貝の舟は沈んで
水底で眠りにつく


わたしも
ほんのひととき
癒しあうやすらぎに
ほほえもうか


蒼ざめた永遠など
手放して


ひっそりと


やわらかな
あなたのまなざしに
ゆられていようか


愛しい人よ


砕けそうな硝子の月を
どうか
その背中にかくして


今はただ


ぬくもりのまま
そばにいて