白芙蓉



やわらかな和紙を
そっと広げたような
白い花びら


ふわり
ふわり


風が触れるたびに
ゆるやかなしぐさで


ほら
呼んでいる


ひらり
ひらり


あの花蔭にふたり
ねえ
逃げ込みましょう


陽射しはまだ
こんなに容赦ない


ほんのひととき
青い香りの日傘の下へ


光を透かす
白絹に魅せられて
緑綾なす
ビロードにつつまれて


ゆらり
ゆらり


時のはざまの迷宮
ふいにしのび笑い
白い花の?


鼓動を誘うあなたの腕
ゆっくりと


目を閉じてしまおう


肩をかすめて
花が落ちる
音もたてずに


白くやわらかく
まぶたに満ちる


光の残像
きらり
きらり


これはきっと
夏が見せる白日夢




(イラスト やすこさん)