驟雨



ふいの雨と一緒に
蝉の声が降ってくる


カナカナ、
カナカナ・・・


遠く近く
さざなみのように


乾いた緑を
やわらかく湿らせて


火照った空気を
ひんやり鎮めて


さわさわと
蝉時雨が寄せてくる


小さな雨雲の周りは
思いがけない青空


この一画だけを
水墨画に塗りかえる
白い雨足


しずくは降り落ち
頬から
手のひらから
こころの奥に
染み透って行く


こんなに
音があるのに


なぜだろう


不思議なほど
静かな世界


ぽつんと見上げる
私を包む


ふいの雨
ひとときの雨


どこかへ
流れて行く前に


木々の匂いを
ここに届けて


生命の声を
ここに届けて



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※ 驟雨 ・・・・・にわか雨のこと。