アメジスト
                                               

黄昏時は
こころが
どこかへさ迷いたがる


紫に透き通って行く
静寂の空


なつかしくて
人恋しくて


こころはきゅんと
とけてしまいたがる


見上げれば
待っていたように
瞬きだす星


ちかり、と強く
ちかり、とふるえて
                                          
両手をひろげた
やすらぎはどこ?


ふいに
心もとなさを覚え


ぽつりと
迷子のように
立ち止まる


こんなふうに
数えきれないほど
繰り返したであろう


曖昧な時間
遠くて近い記憶


ぼんやりと
かすかな疲れに
浸ってしまう


気がつけば
紫は光度を落としながら
肩先にふわりと


降りてくる
ささやきかける


お帰り お帰り
素顔のあなた自身に


一日の枷を
すべて解き


虚ろの仮面は
外しておしまい


こんなにも
夕暮れはやさしく


世界はゆるやかに
周って行くのだから


さわさわと私を包む
温かい匂いの風


呪文が解けたように
耳元に流れこむ
街行く人々のざわめき


もう星は
夜へと滑りこもうとしている
                                           

今日と言う日へ
ささやかな労いの光を
投げかけて


お帰り お帰り


わたしも
ゆっくりと歩き出す


アメジストの空に
そっと
背を押されながら


(壁紙素材)