秋の手紙



庭の金木犀が咲きました


青い空の
高い高いところまで
甘い香りが上って行きます


金色の小さな花たちは
くすくすと笑いながら
おしゃべりしているよう


ふわっと
この手の中に
香りを閉じこめて


秋の澄みきった空気ごと
あなたのもとに届けたいから


メールではなく
手紙にします


でも
どんなふうに
書き出しましょう?


こころに浮かぶ思いを
ぽつりぽつり
綴ってみるけれど


便箋に並んだ文字たちは
とてもぎこちなく見えて


困ったな
なんだか照れてしまう


戸惑いながら
読み返しながら
小さな不安を持て余して


少しだけ疲れているあなたに
伝えたいものは
言葉などではないのでしょう


このやわらかく薫る風のように


あなたのこころを
包みこんでしまいたくて


目を閉じ
幻の肩に寄り添えば


空が甘い
陽射しも甘い
ときめきを誘うほど


金木犀よ


豊かさをもたらす季節の魔法で
どうか
あの人を癒して下さいな


言葉にならない思いなら
香りのはざ間に忍ばせるから


つぶやきに
そっと封をして


さあ
ポストまで駆けだそう