12月のラプソディ



街が賑やかになってきたね
ショーウィンドーはどこも
気の早いクリスマスの飾りつけ


まるで
君を無邪気な子供に
戻そうとしているみたいだ


ツリーにサンタクロース
ひいらぎのリースに金色のベル


ちかちか瞬く灯りたちに誘われて
空もうっすら夜へと駆け足


君は
ウィンドーを次々に覗いては
いつもの倍くらいはしゃいでる


「あなたへのプレゼント もう決めちゃった」


おいおい
それってプレッシャーかけてるの?
焦るなあ


女性向けのプレゼント
男が買いに行くのすごく照れくさいって
わかってるんだろうか


君の横顔をちらっと眺めながら
それでも懲りずに
何がいいかなあと真剣に悩んでる


そんな自分が
なんだかおかしかったりするけど


「今年のクリスマスソングはクワタよねぇ」


流行りのメロディを
けっこう上手に口ずさむ君


うん、いい歌だね
でも・・・


僕のクリスマスは
やっぱりタツローなんだ


「・・・きっと君はこない・・・」


雪に変わって行く冷たい雨
ひとりきりで待つ街角
ツリーの灯りがぼやけそうで


あの切なさが
なぜか妙になつかしい


なんて言ったら君は笑うかな


寂しい時を知っているからこそ
ふたりでいる暖かさが嬉しくて
宝物のように思える


クリスマスってもしかしたら
通り過ぎた季節を
一番思い出してしまう日なのかもしれないね


ちょっぴりセンチになってる僕に気づかず
君はあいかわらず
陽気にさえずっている


「女は年末って忙しいのよ、大掃除あるし」


おやおや
僕だって自分の部屋の掃除くらいするんだよ
そりゃ大幅に手抜きだけどさ


「初詣は着物なんか着たいなあ」


そりゃあぜひとも見てみたい
でも君ひとりで着られたっけ?


ひど〜い、と睨む顔をかすめて
ビュッと木枯らしが吹き過ぎる


君は肩をすくめて
くしゅん、とひとつくしゃみ


ごめん ごめん
コーヒーでも飲もうか
どこの店がいい?


とたんに
にこっと表情を変える厳禁な天使


にぎやかでせわしない12月
くるくると
メリーゴーランドのような街


遠い哀しみなんか忘れていいよね


想い出のメロディが流れる空に
今ならきっと
煌く星をみつけることができるはず


君がいるから


早く早くと急かす笑顔に
つられて僕も足早になる


扉の向こうには
ふたり用のテーブルが待ってるのかな


「ねえ、ここのケーキ美味しいのよ」


ああなんて忙しい
なんて素敵なラプソディ

           



(壁紙 PIPOさん)
『吹く風と草花と』


BGM 『クリスマス・イブ』山下達郎