秋の庭
さっきまで笑っていた月を
雲のてのひらが すっぽり
覆ってしまったから
わたし
まるで目隠し鬼
ふらり ふらり
薄闇の庭をさまようばかり
今触れたのはコスモスの花?
素足にひやり 露草の葉
あちらからも
こちらからも
惑わすようにすだく虫の音
ああ
そんなに鳴いたなら
あの人の足音を逃がしてしまう
やさしい気配が
かすかな吐息が
ここまでおいでと揺れているのに
指先に
さやとなまめく風
追えば追うほど
とろり闇にかき消えて
これは夢?
つれない月を恋うように
取り残されて
わたし
ひそりと目隠し鬼
とぎれとぎれ
手繰る面影 儚くて
せつなさに
こつんとつまづき振りかえる
こんな迷い月の夜
秋の庭の薄闇には
想い人の姿を借りた
まぼろしたちが
そろり
しのび歩くとか