6   月



あじさいの花に
ふと立ち止まるあなたがいて


そんなあなたを
みつめるわたしがいて


薄曇りの空の下


小道に咲いたあじさいは
重たげな頭をかすかに揺らし


まるで
なかなか落ちてこない雨を
待ちわびているよう


だから
あじさいの代わりに
そっとつぶやく


雨よ降れ


陽射しを隠して
ふさぎこむくらいなら


いっそ
さぁっと音をたてて
銀糸の幕が垂れ込めたほうがいい


そうすれば


大地は水気を含んで
その恵みに潤い


パステルの花びらは
細かいビーズたちに飾られ


淡緑の葉は
生き生きと洗われるから


そして わたしは


透き通るしずくを
ふり仰ぐあなたに
さりげなく傘をさしかけようか


そう
雨が降ったなら


すべては
煙るようなブルーグレーの中


ためらいも
気まずさも
雨音と一緒に
流されて行くかもしれない


細くゆるやかな
あじさいの小道


どことなく他人行儀な背中と
焦らすような曇り空とを
交互にみつめていた


ため息はうっすらと
空にかかるけど


雨はまだ
あじさいとわたしを
待たせたまま


雲の迷路の中から
降りられずにいる


6月の物思いは
ほんの少し・・・宙ぶらりん




(壁紙 PIPOさん)