1999年 11月20日、21日 この2日間は松戸ランというランのイベントがあった。この頃サークルでは普段の活動の活発化の一端として、月例ランというものを企画して、行ける人で走ろうという催しがあった。月例ラン自体はすぐ自然消滅してしまったが、この松戸ランは最初で最後の素晴らしい月例ランとなった。

千葉県松戸市。大学に入るまでそんなに注目したことはなかったが、おれがサークルに入ったとき、当時会長だった小橋さんの家があるということでよく耳にした。なぜかうちのサークルは地元自慢というか、他人の住んでいる所より自分の住んでいる所の方が都会だぞ、っていう感じの言い合いがよくあるので、頻繁にその名を耳にしたのである。

この松戸ランは、すべて自走で走りきった。理由は簡単で、「輪行嫌い」が第一の理由だ。始発電車での輪行でさえ嫌いだってのに、普通の時間に、しかも東京の都心のあたりのメチャ人が多いところを通るのなんかとんでもない!そんなのおれには拷問に等しい。まぁ、そんなのも理由の一つではあったが、一番の理由はやはり自分の足で行きたいと思ったからだ。それと走ったことない所を走るいい機会でもあったし。つまりはすべてチャリが好きなところからきているのだろう。

コースを簡単に説明すると、国道246で東京方面へ向かい、環7で都心を迂回して国道4で埼玉に入って、隣の千葉県松戸市へ、という感じである。距離は75kmくらいだったから、距離的には心配なかった。でも今回は普通の道ではなく、車中心の都会の道だ。環7通りをチャリで走るなんて無謀なことだが、これもチャリに乗るに当たって何かの経験になるだろうと思い、このコースにした。走りにくいだろうということは予想がついた。でもこういうイベントのときには自然と割り切ってそんなことができるから不思議だ。

11月20日は土曜日で、1年生だったおれは授業がなかった。集合は午後4時に新松戸駅なので、昼頃家を出た。お馴染みの国道467で北に向かい、国道246へ。実は国道246は中学3年のとき関東をぐるっとまわって日光へ行った帰りに通ったことがあるのだが、なにしろ4年も前のことだし、そのときは日が暮れてナイトランだったので246の道の記憶は全くと言っていいほどなかった。だからほとんど初めて状態だった。でも2回目なのに初めて通るような感じで走れるのはとってもお得だ。また新鮮な感じが味わえるから。

246は意外とアップダウンがたくさんあってだるかった。交差点「市ヶ尾」では、東名高速道路に入りそうになった。普通に246の路側帯を走っていたら、いつの間にか自分が走っている道が他の道と分離してきて、何か変だなぁと思っていたら目の前に「↑東名」という看板が現れた!「こりゃぁ〜やばい!」と思って急いで引き返したが、東名に入ろうとしてくる車がバンバン来るのでかなり恐かった。あれにはまいった。

246の途中のコンビニで休憩したが、毎度の事ながら見知らぬ土地で休憩している状況が新鮮だった。走っているときも新鮮さは感じるが、やはり休憩しているときは緊張がとぎれるので素直にその新鮮さを感じることができるのだろう。

246を進んでいると、神奈川県と東京都を分けている多摩川にやってきた。鶴見川を越えたときもそうだったが、大きな川を渡るときはいつも「素晴らしい!」と思う。景色がすごくよかった。車道は車がいっぱい走っていてあぶないし、せっかくちゃんとした歩道があるので、多摩川にかかる新二子橋は歩道を走っていた。しかし、渡っていると妙なところに気が付いた。なんと先の方で車道と歩道が別れているではないか!?よく見ると車道の方はどんどん上がっていって、高島屋の上を越えて道が続いていて先が見えなくなっているではないか。そして気になる歩道の方は途中で車道から分離、どんどん下っていって、最後は地上に着いた。246で進みたいのにいきなりわけの分からない場所に出たので少し混乱した。どうすれば246に乗れるのか?そう思いながら世田谷区をウロウロするが、たまに見える246はずっと空中を走っている。これでは入れない。なんとか入れる所までやってきたが、お約束の上りであった。ああいった大きな道路は気軽にアップダウンを造るが、チャリにはほんと迷惑だ。まぁ、車中心の考えなのでしょうがないが。

246にはそういったアップダウンがたくさんあり、とくに交差点があるところの上を通る陸橋が多いが、そういうところはほんとにバイパスっぽい。割り切って走っているが、けっこう辛い。なにが辛いかって、別に上りがきついだけじゃなく、むしろ車のスピードに合わせて自分もかなりのスピードで走らなければならないところだ。ちんたら走っているのは逆に危ないし、そんなスピードで走ってんならこんなとこ通るなよ、という雰囲気がそこにはあるのだ。しかし、246をずーっと走っていると、所々で地元の人が前を走っていたりする。ママチャリが多かったが、中にはマウンテンもいた。しかし彼らはおれから見れば遅いので、前をふさがれると非常にうざかった。隙をみてさっと抜かすと、ムキになって追いかけてくる元気な輩もいたが、おれについてくるやつはいなかった。しかしママチャでけっこう早いヤツもいたりして、ちょっとおもしろかった。

色々なことがあったが、なんだかんだでついに環7通りにやってきた。環7は予想以上に走りにくかった。信号が多くてすぐ捕まるし、陸橋がたくさんあるし、線路を越えるときは階段を上り下りしなければならなかったりと、道自体が走りにくい。しかし、走りにくい一番の原因は車だ。とにかく交通量がメチャクチャ多い!その上路駐がお祭りのように続いているし、一番左の車線はバス優先道路なのでバスがガンガン通って超危ない!一度死にそうになった。そんな感じだったので、所々車道を走ったが、ほとんど歩道を走るハメになった・・・。景色はというと、ビルばっかで全然おもしろくない。同じようなビルの風景なので、走っていても景色がちっとも変わらない感じがした。とくに面白いわけでもないし、超走りにくいので2度とこの環7を通ることはないだろう。しかし、これはこれでいい経験になったような気がする。修羅場の経験とかね。

世田谷区、杉並区、中野区、練馬区、板橋区、北区、足立区、電車でも来たことないような所をひたすらチャリで走って、景色とかは別として、それはそれですごく新鮮だった。途中神田川や荒川などの大きな川を渡ったときはやっぱりすごくよかったし、環7とはいえ、所々の下町っぽい風景もなんかよかった。そして走りづらかったももの、思い出深かった環7ともお別れの時がやってきて、国道4号の入口にやってきた。

しかし、その前にちょっとしたできごとがあった。都会の栄えている所も過ぎて、環7もだいぶ落ち着いた道になってきたころ、走っているおれの前に1人の男がママチャリに乗って路側帯を走っていた。当然のようにそいつを抜かすと、そいつはなんかムキになって、おれが信号待ちをしていると信号が青になったとたんにダッシュをかけて、ひたすら必死でママチャをこいでおれをちぎろうとした。しかしおれもママチャリに先を走られるのは気に入らないので、けっこう飛ばしてまたそいつを抜かした。だがそいつはママチャリなのになぜかメチャ速い!メーターを見ると時速28km。なかなかやるなと思った。おれもけっこう距離を走っているので疲れが足に出かけていた。おれは車道を、そいつは歩道を走っていて、離しても信号で追いつかれる・・・という感じでけっこうしぶとかったが、ついにおれも本気を出してマジでダッシュをかけて信号も黄色ダッシュしたりしてやっとそのママチャリダーをちぎった。

ちらっと後ろを振り返るとヤツの姿が見えないので少しほっとしたが、しばらくするとなにやら後ろからチャリのホイールが回転する音が聞こえてきた。「まさか?」と思って後ろを振り返ると、今度はマウンテンに乗った地元のヤツが現れた!そしてバトルは第2ステージへ・・・。どうやらそいつはおれがマウンテンに乗っていてグローブとかしてちょっと本格的に乗っているやつに見えたらしく、闘争心むき出しでおれにバトルをしかけてきた。別に張り合う必要もないんだけど、ブロックタイヤにカンチブレーキのダイクマで買ったような安物どノーマルMTBでいい気になっておれの前を走られるのが気にくわなかったので、またしても大人げない張り合いをしてしまった。けっこう足に疲れが出てきていたが、なんとかジモティーのチャリダーをちぎった。めでたしめでたし・・・。

そしてようやく国道4号に入った。ここからは日光街道である。けっこうきれいめの道が続いたが、「西保木間」からは県道49号を進む。ここから埼玉県だ。しかしこの県道は普通の道なのだが、路側帯が狭いのでけっこう走りにくかった。なんか源チャリに乗ったヤンキーっぽいにーちゃんがたくさんいたので、しょっちゅう道をゆずった。この辺りから足を中心に体全体がだるくなってきた。一週間チャリに乗っていなかったのと、風邪の病み上がり&寝不足続きで体が本調子でなかったのが響いたのだろう。だんだん道が長く感じてきた。

埼玉県と千葉県の県境の江戸川に架かる流山橋の上で集合時間の4時になってしまったので、橋の上で小橋さんに連絡をした。4時になると辺りに懐かしい音楽(題名が思い出せない!)が流れ始め、微妙な夕日で景色もよく、そして自分の家から遠く離れた土地に自分が1人チャリで来ていて、橋の手すりに寄りかかりながら携帯で電話をする。その場にいないと分からないと思うけど、このシチュエーションがすごくよかった!マジでドラマのワンシーンのようだった。

30分ほど遅刻してようやく集合地である新松戸駅に着いた。駅の周辺は非常に分かりづらく、小橋さんに書いてもらった地図がなかったらたぶんたどり着けなかっただろう。駅に着くとみんなの姿が見あたらない。少し心配したが、すぐ近くのスペースにいた。そしてメンバーがそろったのでみんなで小橋さんの家に向かった。チャリに乗ったのはここまでだったが、距離の割にはやけに疲れた。体調のこともあるが、都会独特の走りにくさからくる疲れもあった。
小橋さんの家にて、飲み会
小橋さんの家に到着。チャリと荷物を置いて、夕飯の鍋の食材の買い出しに出発。車で近くのダイエーに向かった。「プッチーニ」なるカボチャ系のあやしい野菜を始め、定番のものや肉などを買い、車いっぱいにスーパーの袋を詰めて小橋さんの家に帰った。

キッチンでみんなで野菜を切ったりと鍋の準備をして、ようやく食べるときがやってきた。鍋はすごくおいしかった。そしてすごく楽しかった。鍋が終わると酒。これもすごく楽しかったが、この日は疲れていたので酒が回ってちょっと酔った。小橋さんのネコはひたすらソファーにゴロゴロしていたが、なでたりちょっかいをだしたりすると怒って引っかいてきた。テレビでは有線大賞の番組がやっていて、夏から冬にかけてパルでイヤと言うほど聞いた郷ひろみの「ゴールドフィンガー’99」がトップだった。

小橋さんの部屋に行った後、2グループに分かれて夜のドライブに出かけた。「スナック無限」を始め、おもしろい発見がいっぱいあってすごくおもしろかった。小橋邸に戻ると97年や98年の虫ゴムを見せてもらった。秋元さんのを始め、おもしろいのがいっぱいあった。やっぱり落書きはおもしろい。イベントはみんなそうだが、楽しくて思い出に残る。実に内容の濃い1日だった。夜遅く、夜中の3時頃寝た。みんなでざこ寝で寝たが、おれの両隣りの人がそれぞれ掛け布団を引っ張って持っていってしまったので、ちょっと辛かった。
コース:
大和→国道467→瀬谷区→下鶴間→国道246→町田市→緑区→青葉区→宮前区→高津区→世田谷区→上馬→都道318(環7通り)→中野区→練馬区→板橋区→北区→足立区→国道4→県道49→草加市→県道29→八潮市→三郷市→流山市→県道280→松戸市→新松戸駅→小橋邸
走行距離 76.54 km
走行時間 3h 42m 9s
平均速度 20.6 km/h
最高速度 41.6 km/h

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