ロスト・イン・ラ・マンチャ

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監督キース・フルトン/ルイス・ぺぺ
製作 ルーシー・ダーウィン
ナレーション ジェフ・ブリッジス
編集 ジェイコブ・ブリッカ
音楽 ミリアム・カトラー
アニメーション ステファン・アヴァロス/チャイム・ビアンコ
絵コンテ テリー・ギリアム
キャスト
ジョニー・デップ
ヴァネッサ・パラディ
ジャン・ロシュフォール
テリー・ギリアム
公式サイト(日本語)
http://www.cqn.co.jp/LAMANCHA/

 かつて名優オーソン・ウェルズも製作に着手しながら、ついに完成の陽の目を見ることができなかった映画、「ドン・キホーテ」。この大作に鬼才、テリー・ギリアムが挑む。ハリウッドではしばしばプロデューサーたちと対立し、さらに「バロン」の失敗もあって資金調達が困難になったテリーは、ヨーロッパの資本を頼りに、スペインを本拠に「The Man Who Killed Don Quixote」の制作に着手する。だがこのプロジェクトは出だしから躓きの連続だった。予定されていた出資者の突然の離脱で、4000万ドルを予定していた制作費は3200万ドルに削減しての仕切り直し。出演交渉が完了していながら、ヒロイン役のヴァネッサ・パラディとの正式な契約がいつまで経っても締結できない、出演者の顔合わせの期日が近づいているというのに、ドン・キホーテを演じるジャン・ロシュフォールは体調を崩している…。さらに、ようやく撮影が開始されてもトラブルは絶えない。予定していたロケ地は米軍の演習空域の真下。初日から、撮影中のクルーの上をF-16戦闘機が轟音を立てて飛び回る。二日目には予想もしない雹混じりの大雨。そしてロシュフォールのリタイヤ………。わずか6日で撮影は中止、映画の制作も事実上ここで終ってしまったのだった………。

 同じギリアムの「12モンキーズ」のメイキング・ドキュメンタリーなどを手がけたコンビによる、スタート時にはよくあるメイキングものが、いつの間にかなんだか分からない、でもものすごくレアな、一つのプロジェクトがなすすべもなく崩壊していく様子を記録したドキュメンタリーに変質してしまった作品(主催者側発表)。

 とりあえずこれから劇場で見る人は、パンフは買いましょう。んで、袋とじになってる部分(^^;)を読んで、自分なりに考えてみて頂きたい、と言う感じかな。世にも珍しい袋とじ付パンフに敬意を表して、この点についてはこれ以上は何も言わない。何も言わないと実は肝心なことも言えない、という恨みもあるんで一言だけいうなら、私個人は半々で、信じ、疑う、としか言えまへん。

 その上で、ジャン・ロシュフォールのドン・キホーテがすばらしい。どこから見てもドン・キホーテってこうだよな、と思わせる絵になっている。このじいさんが勘違いしまくって行く先々で大騒動を巻き起こす映画、かなり観たい、と思った。微妙にチープ感も感じるいくつかの仕掛けやセットも、ちゃんと映画という製品の中に組み込まれてスクリーンに映し出されたなら、全く違う味わいをこちらに見せてくれたのかも知れない。そのへんで、微妙にこの(完成しなかった)映画、ちゃんと観てみたい、って気にさせる力はあるよな、と思った。他人からは得体の知れない人物、訳の分からぬ狂人、と見られてはいるが、その本質は無垢で高貴、というドン・キホーテに、ギリアムは自分自身を投影しているんだろうなあ、という感じが随所から匂ってくる。裏に何かあるのかどうか、この際問わない、テリー・ギリアムが紡ぎ出すドン・キホーテの映像ってのは、真剣に観てみたいよなあ、と思わされた時点でこっちの負けですかね。

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